醤油の知識
大久保さんの木槽タンク
11時に蔵に集合というお便りをいただき伺うと、関係者らしき人たちがちらほら集まりだしていました。「やあやあ、久しぶりだね」と挨拶もそこそこに大久保さんが案内してくれたのは、元々玄関のあった場所。そこにすっかりと新しい建物ができていて、大きな引き戸の扉部分にはしっかりと漆が塗られていました。
扉を開けると皆が「お~!」と口にしているのが聞こえてきます。大きな木槽タンクが横に寝転んでいます。この前代未聞ともいえる設置のされ方をしている1万リットルの木槽タンク が2つ、これにもまた綺麗に漆が塗られています。
これは何かというと諸味の発酵タンクです。通常は縦型の桶やプラスチックタンクが一般的で、中の諸味をかき混ぜる攪拌を行うことで管理をしていきます。ただ、この攪拌作業がとても人手も体力を必要とする作業で、しかも空気による攪拌だと過剰に混ぜすぎてしまうと大久保さんは感じていたそうです。そこで考案したのが諸味を混ぜるのではなくて、動かすというもの。
この木槽タンクの中に大きなスクリューが入っていて、5馬力のモーターでゆっくりとぐるっと動かします。中の諸味がその動きにのって一回転するといいます。タンクの中に諸味が満たされている状態にするので空気と接触する面積も最小限になり攪拌過多にもなりません。しかも、メンテナンスが楽で人でも不要。一石三鳥ともいえる仕組みです。
この木槽タンクを手掛けたのは日本木槽木管株式会社。もともとこの試みを大久保さんから打診されたのは8年前だったといいます。ただ、通常は縦に備え付けることを前提にした構造なので、横にすることが現実的ではなかったといいます。そのまま横にすると、下に過重がかかり上の板と板の間が空いてしまうそうです。板同士が密着していないと中身が漏れる原因にもなり、しっかりと品質保証のできないものを手掛けるわけにはいかなかったといいます。それでも大久保さんの熱意に押される形で試作品を作り、大久保さんとも議論を重ねて今日の完成を迎えたとそうです。
「漆はいいもんだよ」と大久保さんはいいます。「昔ね、木のお風呂もしばらく使い続けると黒いカビがでてくるわけさ。それが嫌なもんで漆を塗ったところ、これが調子いいんだよね。時間がたっても水から嫌なにおいがしないんだ」。そんな体験から内側にも外側にもしっかりと漆を塗っているそうで、日本木槽木管さんも通常タイプの木槽タンクにも漆を採用するようになったといいます。貯水タンクなどの場合、水の匂いに大きな違いがあるとそうです。
大久保さんはこうもいいます。「学問的なことじゃないんだ。感覚的によいものだと感じているんだ。だって、木でつくられた建物は百年たってもメンテナンスをしていれば使い続けることができるけど、鉄筋でつくった建物は40年もたてば老朽化だなんて言われてしまう。自然なほうがいいじゃない。漆は木の樹液でしょ。それを木に戻しているわけだよね」
大久保さんの創意工夫をどんどん形にしていくアグレッシブさは不変のもので、その柔軟性とチャレンジ精神を目の当たりにして清々しい気持ちで帰路につきました。
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醤油のつくり方
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1
原料処理
カチカチの材料をほくほくにしたり、溶かすことで、菌が材料を醸し、美味しさに変化しやすいようにします。
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2
麹づくり
醤油づくりで一番重要視されている工程です。種麹を原材料に混ぜて、麹菌を繁殖させることで酵素を生み出します。
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3
塩水
麹に塩水を加えて諸味をつくります。塩分濃度を高めることで雑菌から守り長い発酵熟成の時を迎えます。
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4
諸味
ゆっくりと乳酸菌や酵母菌が大豆や小麦を醸します。どろどろの味噌のような状態で、半年~三年の時を過ごします。
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5
圧搾・火入れ
諸味を布に入れて、圧力をかけて圧搾し、火入れとろ過をします。殺菌と香りを引き立てる火入れも技術が必要です。
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6
完成
ビン詰めされてラベルを貼ってようやく完成。長いものだと原料処理から二~三年かけて醤油になります。
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