醤油の知識
105|昨年の仕込みをふり返って。
年始に最後の更新をして、いつのまにかこんな時期になっていました。今期の仕込みもスタートしましたが、その前に昨年の仕込みを簡潔にふり返ってみようと思います。
<酵母添加無し>
年始の更新で書きましたが、高温の日が続いた事や荒櫂を日数長めにやった事に起因するのでしょうが、1つの桶(濃口)が12月に酵母増殖の兆しがありました。まったく想定してなかったので焦りましたが、逆にいい機会なので例年行っていた酵母添加を今年は全タンクなしでやってみようという事にしました。
結果としては、冬場から暴走気味だった桶は4月上旬には旺盛に発酵し(通常より1か月くらい早い)逆に他の桶・タンクは例年よりかなり遅いスタートで、再仕込みに至っては6月中旬にようやく湧き始めた感じでした。
ただ、夏を越えて分析すると湧くのが早かった物と遅かった物、アルコールの数値・官能的にも意外に差はありませんでした。また、酵母添加の有無に関しても、例年の物と比べアルコールの数値、官能ともに差は感じられませんでした。
<全窒素が1.8を越えた>
1年目2010年の醤油(濃口)は11水仕込みで全窒素ギリギリ1.5だったのですが、2018年仕込みは1.8(濃口11水)という自分でも驚きの数値に届きました。数値自慢のようで恥ずかしいのですが、【国産大豆・国産小麦、大豆蒸煮は無圧、麹は非機械製麹】という条件で考えると、なかなかだと思いました。
麹の酵素力価は昨年と大きくは変わらないので、やや塩分を下げた事と、荒櫂を長めにやったのが良かったのかなぁ‥ と思います。 ちなみに再仕込みは2.7で、これも今までで最高の数値でしたがこちらはあまり荒櫂やってないので、もうよくわかりません。
<ソーヤかオリゼか>
昨年、久しぶりにこの比較をやって、先日「生」「火入れ(湯煎)」で味見しました。
[オリゼ]
・生
香ばしいかおり。甘さを連想する香り。口に入れると、「酸味」「塩味」どちらともとれるようなあいまいな刺激を舌に感じるが、中間から滑らかで旨味がある。
・火入れ
焼きおにぎり様の香り。ミルキーで甘ったるい香り。生に比べると先味での舌の刺激が和らいだ。
[ソーヤ]
・生
香りの主張が弱い。上がってこない。舌に刺激なく、滑らかで奥行きのある旨味。
・火入れ
なんと表現していいか分からない香り(自分は某小規模メーカーの特徴的香りとして認識しているが、これを言葉で表現できない。)
みたらし様の香り。
滑らかで奥行きのある旨味。
オリゼ、ソーヤ、と言ってもメーカーの中でも沢山の菌株がありますし、メーカーが違えばさらにあるわけで。そして、製麹や諸味管理でも差は生まれるので、あくまで今回うちで比較して、自分が感じたのは。という事です。
これを踏まえて、今年の仕込み頑張ります!
1984年生まれの醤油職人。
高校生の時に自社での醤油醸造の復活を志して東京農業大学 醸造科学科に入学。入学後、「学校に通っているだけでは自分の求めるものは得られない。」ということに気づき、伝統的製法による醤油造りを続けられている醤油蔵を探し、卒業までに7つの醤油蔵で短期間の研修を受け入れて頂く。卒業後、岡本醤油醸造場にて一年間の研修。その後、JFCS(ジャパン・フードコーディネーター・スクール)で一年間学び2009年6月より、実家であるミツル醤油へ入社。2009年11月 夢である醤油造りの復活と、地元・糸島を全国に発信したい。という思いをリンクさせ具現化する、社内別ブランド「itosima terroir」(イトシマ テロワール)をスタート。
ミツル醤油醸造元
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1
原料処理
カチカチの材料をほくほくにしたり、溶かすことで、菌が材料を醸し、美味しさに変化しやすいようにします。
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2
麹づくり
醤油づくりで一番重要視されている工程です。種麹を原材料に混ぜて、麹菌を繁殖させることで酵素を生み出します。
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3
塩水
麹に塩水を加えて諸味をつくります。塩分濃度を高めることで雑菌から守り長い発酵熟成の時を迎えます。
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4
諸味
ゆっくりと乳酸菌や酵母菌が大豆や小麦を醸します。どろどろの味噌のような状態で、半年~三年の時を過ごします。
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5
圧搾・火入れ
諸味を布に入れて、圧力をかけて圧搾し、火入れとろ過をします。殺菌と香りを引き立てる火入れも技術が必要です。
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6
完成
ビン詰めされてラベルを貼ってようやく完成。長いものだと原料処理から二~三年かけて醤油になります。
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