醤油の知識
096|仕込み比較 結果
以前にも書きましたが、昨年は大豆をカットした麹と、通常のものを桶ごとに仕込み分けました。
その後、酵素力価を分析したら意外にカットの方が低かったとか、楽になると思った櫂入れがより大変になったとか書いてきましたが、夏を越えていよいよ数値的には完成形なので分析しました。
⑪が通常の麹で
⑫が大豆カット麹です。
今回の比較で最も重要な項目はアミノ酸・ペプチド(旨味)の指標である「全窒素分」です。
結果としては ⑫の方がやや高いのですが差が微妙で大豆をカットした事による差とは言い難いと思います。
ただ、酵素力価の分析で⑫の方が低かったのに全窒素は⑫が高いというのは矛盾します。 とは言え、桶1本=製麹4回分で、サンプリングはそのうちの1回分のみなので、たまたまサンプリングした回だけ⑫の力価が低かった。という可能性も考えられます。
もしくは、力価は⑫が低かったが物理的に細かくなっている分、諸味期間に酵素の作用を受けやすく逆転した。というのもあるかもしれません。
⑪は試験的にいつもより塩分を低く仕込んだのですが、それによって0.5%以上⑫の塩分が高い中での数字(全窒素)と考えると、近い塩分%で仕込んだ場合には差が明確に出たのかもしれません。また、夏場に諸味の撹拌をしていて⑫の方が酵母の発酵が弱い感じがあり、最終的にもアルコールは⑫の方が低い値になりました。
よく、初期の櫂入れが過多だと諸味が粘調になって乳酸発酵過多になりアルコール発酵が弱くなる。と聞きますが、原料が細かくなっている事を考えるとそういった現象が起きていたのかもしれません。
最後に味見をしましたが、旨味の差はほぼ感じませんでした。 それより塩分の差がはっきりあり、僕は⑪の方が好みでした。(醤油単体での味見ですが)
もっと明確な差が出ると思って、今年の仕込み前には大豆をカットする機械をオーダーしようと意気込んでいました。 ただ、結果からすると今年はすべて従来のやり方で仕込みます。 ほんとはもう1年比較したいのですが、さすがにまたデモ機を借りる勇気が無いので‥。
1984年生まれの醤油職人。
高校生の時に自社での醤油醸造の復活を志して東京農業大学 醸造科学科に入学。入学後、「学校に通っているだけでは自分の求めるものは得られない。」ということに気づき、伝統的製法による醤油造りを続けられている醤油蔵を探し、卒業までに7つの醤油蔵で短期間の研修を受け入れて頂く。卒業後、岡本醤油醸造場にて一年間の研修。その後、JFCS(ジャパン・フードコーディネーター・スクール)で一年間学び2009年6月より、実家であるミツル醤油へ入社。2009年11月 夢である醤油造りの復活と、地元・糸島を全国に発信したい。という思いをリンクさせ具現化する、社内別ブランド「itosima terroir」(イトシマ テロワール)をスタート。
ミツル醤油醸造元
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2
麹づくり
醤油づくりで一番重要視されている工程です。種麹を原材料に混ぜて、麹菌を繁殖させることで酵素を生み出します。
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3
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4
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5
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諸味を布に入れて、圧力をかけて圧搾し、火入れとろ過をします。殺菌と香りを引き立てる火入れも技術が必要です。
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6
完成
ビン詰めされてラベルを貼ってようやく完成。長いものだと原料処理から二~三年かけて醤油になります。
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