醤油の知識
醤油の香り
香りを構成する要素はさまざま
醤油にはたくさんの香り成分が含まれていています。花や果物やコーヒーなどの成分が複雑に溶け込んでいて、その数は300種類以上とも。それらの香り成分を細かく分析をしていくと、以下の5つに由来しているといわれています。
1)原料由来
2)麹菌
3)乳酸菌
4)酵母菌
5)化学反応
大きな役割を担うのは酵母菌
原料由来の香りについては、大豆や小麦などの成分による香りです。麹菌・乳酸菌・酵母菌は醤油づくりに欠かせない微生物で、以下の図に示したような動きをします。中でも香りについては酵母菌が大きな役割を担っていて、酵母発酵によるアルコールの生成とともに多くの香り成分を生み出します。
化学反応というとメイラード反応が有名です。焼き鳥や焼とうもろこしなどの、あのこうばしい香りです。醤油中の糖分とアミノ酸が反応(アミノカルボニル反応)してつくり出されるもので、醤油を象徴する魅力の一つです。
主発酵酵母と後熟酵母
酵母菌は主発酵酵母と後熟酵母とに分けられます。乳酸菌が活躍した後に動き始めるのが主発酵酵母です。主にアルコール発酵をしながら、醤油特有の香り成分であるフラノン化合物をつくります。麹菌や乳酸菌がつくった有機酸を元に、果物などの華やか系の香りでるエステル類をつくり出します。
一方の後熟酵母は、熟成香や燻製のような重厚感のある香りをつくり出します。炒られた小麦の皮の成分などに作用するもので、しっかり熟成した雰囲気は後熟酵母のおかげなのです。
蔵元によって、そこに住み着く主発酵酵母と後熟酵母の種類や構成比率が異なります。それが、それぞれの蔵元独特の香りに結びついているのだと思います。
アルコール類
酵母菌というとビールや日本酒に欠かせない微生物ですが、糖からアルコールをつくりだします。醤油にもアルコールは2~3%程度含まれていて、欠かせない存在になっています。
醤油からふわっと広がるよい香りはアルコールの揮発による部分もあり、醤油の香りを引き立てる重要な役割を担っています。
フラノン類
4-ヒロドキシ-2-エチル-5-メチル-3-フラノン(HEMF)が代表格で醤油特有の香り成分です。甘いカラメルやケーキのような香りと表現されます。
エステル類
乳酸エチル、酢酸エチル、酢酸メチルなど40を超える成分が醤油には含まれています。果物や花の香りの成分で醤油に華やかな香りを加えています。
麹菌や乳酸菌がつくりだした有機酸を元に主発酵酵母の発酵過程でつくられます。夏場に諸味がプクプク発酵しているときに香ってくるりんごやパイナップルの香りがこれにあたります。
メラノイジン
火入れをする目的の一つがこうばしい香りをつけることで、火香(ひが)をつけるともいわれます。醤油に含まれるぶどう糖とアミノ酸に熱が加わることで起こる反応(アミノカルボニル反応)によってメラノイジンととのもにつくられる香りの成分です。
また、香り成分のアルデヒド類(イソバレルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、アセトアルデヒドなど)の成分は生醤油の含有量はとても少なく、火入れをすることで増加するともいわれています。熱を加えることで化学変化を起こして香りをつけています。
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醤油のつくり方
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1
原料処理
カチカチの材料をほくほくにしたり、溶かすことで、菌が材料を醸し、美味しさに変化しやすいようにします。
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2
麹づくり
醤油づくりで一番重要視されている工程です。種麹を原材料に混ぜて、麹菌を繁殖させることで酵素を生み出します。
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3
塩水
麹に塩水を加えて諸味をつくります。塩分濃度を高めることで雑菌から守り長い発酵熟成の時を迎えます。
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4
諸味
ゆっくりと乳酸菌や酵母菌が大豆や小麦を醸します。どろどろの味噌のような状態で、半年~三年の時を過ごします。
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5
圧搾・火入れ
諸味を布に入れて、圧力をかけて圧搾し、火入れとろ過をします。殺菌と香りを引き立てる火入れも技術が必要です。
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6
完成
ビン詰めされてラベルを貼ってようやく完成。長いものだと原料処理から二~三年かけて醤油になります。
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