醤油の知識
甘口醤油が好まれる理由
多くの地域で使われています
「九州の醤油は甘い!」と聞いたことのある方は多いと思います。そして、九州だけと思いきや中国地方、北陸地方など、地域によって甘いタイプの醤油が好まれていて、一般的に使われています。
このタイプの醤油に慣れていない方は驚かれるかもしれませんが、スーパーにいくと甘口タイプの醤油がずらりと並んでいます。むしろ、甘くない醤油の方が珍しいという場合もあり、地域に根付いた醤油というわけです。
日本海側沿いに多い甘い醤油
日本海側の地域は甘めの醤油が多い印象を持っています。石川県金沢市に大野町という醤油の産地があるのですが、この土地で一般的に使われている醤油も甘い醤油。そこからさらに北上をして能登半島の先端、輪島のあたりは特に甘い醤油が使われています。
山形県や秋田県も甘い醤油です。山形の「芋煮会」に欠かせない醤油もだしを加えた甘めの醤油が定番です。甘い醤油が流通している地域の中でも、海岸沿いに近づけば近づくほど甘みが増していき、内陸に入るとしょっぱい醤油が好まれる傾向もあるようです。
甘い醤油を大きく分類すると
大きく2つのグループに分けられると感じています。濃口醤油は製法によって3つに分類されます。本醸造、混合、混合醸造なのですが、商品ラベルには「こいくちしょうゆ(本醸造)」のようき記載されています。原材料にアミノ酸液を使うものが混合/混合醸造で、使っていないものが本醸造です。
アミノ酸液はうま味が凝縮された液体で醤油の原材料として使われます。これには甘みは付いていないので甘味料を併用することが多いのですが、その時に使われるもので多いのが甘草、ステビア、サッカリンなどの甘味料です。
一方で、本醸造タイプの醤油のしょっぱさをやわらげる目的や、だしも加えて甘さを付けたいといった時に砂糖やブドウ糖が使われることが多い印象です。本醸造タイプの甘い醤油と混合/混合醸造タイプの甘い醤油を比較すると、混合/混合醸造タイプの方が甘さはかなり強いはずです。
甘味料で甘みをつけています
甘口醤油は甘草、ステビア、サッカリンなどの甘味料を入れることによって甘みをつけています。これらを加物が入っている醤油だからよくないものだという意見を耳にすることも事実です。
ただ、その地域ではこれが醤油として愛されていて、甘さの加減が醤油蔵によって異なるので、「祖母の時代からずっと●●醤油を使っている」という声を聞くと一概に否定すべきではないとも感じています。
醤油蔵によって甘さが違う
この甘さの違いというのが面白くて、海に近い地域ほど甘さが増していく傾向があったり、同じ九州でも南に行くほどに甘さが増していき、北陸の方だと能登半島を北に進むほどに甘さが増してくるなども傾向もあります。
馬刺しや白身の刺身や卵かけご飯、焼きおにぎりなどにはとても相性の良い醤油だと感じています。
九州の甘さの理由には諸説あり
各地になぜ甘い醤油が浸透したのか、はっきりしたことはわかりません。甘口代表の地である九州では焼酎に甘口の料理が合うから、出島でのオランダ貿易で砂糖がたくさん輸入されていたからなど諸説あります。
そんな甘口に親しむ家庭にお邪魔すると、甘口の濃口醤油と淡口醤油に加え、もっと甘い刺身醤油の3本が常備されていることもあります。関東の人が見ると3本の醤油を使い分けているの?!と驚くのでは?
・ 甘い理由は諸説あり
・ 気温が高いほど生理的に甘いものを欲する
・ 奄美大島など砂糖の産地が近い
・ 漁師が船の上で食事を作るとき、砂糖と醤油両方なくても甘い醤油1本で調味でき、エネルギー補給にもなった
・ 長崎の出島を通してオランダと貿易があり、砂糖の大量輸入があった(それによって、カステラなどのお菓子が名産になりシュガーロードと呼ばれるものも)
・ オランダの味覚が九州の味に影響を与えた(料理例:しっぽく料理、豚の角煮)
・ 蒸留酒である焼酎は糖分を含まないので、甘い料理に合う
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醤油のつくり方
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1
原料処理
カチカチの材料をほくほくにしたり、溶かすことで、菌が材料を醸し、美味しさに変化しやすいようにします。
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2
麹づくり
醤油づくりで一番重要視されている工程です。種麹を原材料に混ぜて、麹菌を繁殖させることで酵素を生み出します。
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3
塩水
麹に塩水を加えて諸味をつくります。塩分濃度を高めることで雑菌から守り長い発酵熟成の時を迎えます。
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4
諸味
ゆっくりと乳酸菌や酵母菌が大豆や小麦を醸します。どろどろの味噌のような状態で、半年~三年の時を過ごします。
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5
圧搾・火入れ
諸味を布に入れて、圧力をかけて圧搾し、火入れとろ過をします。殺菌と香りを引き立てる火入れも技術が必要です。
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6
完成
ビン詰めされてラベルを貼ってようやく完成。長いものだと原料処理から二~三年かけて醤油になります。
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