醤油の知識
岡本醤油部(三重県四日市市)
情報が出てこない醤油蔵
「岡本さんはいい溜醤油をつくりますよ」と、同業者の方から教えていただきました。ところが、ホームページで検索をしてもなかなか情報が出てこないのです。いまどき珍しいなぁと思いながら訪問させていただきました。
出迎えてくれたのは岡本和也さん。「よく来てくれたね」と歓迎いただきながらの話ぶりが、なんとも元気で流暢で心地よいのです。思わず、「お話がとても饒舌ですね」と伝えると、「酒飲むと、もっとすごいよ」と岡本さんはニコリ。
業務用途をメインにする溜醤油づくり
岡本醤油部では溜醤油と濃口醤油をつくっていて、出荷のほとんどは溜醤油だそうです。溜醤油がメインというのは中部地方独特ですね。
製造現場に案内いただくと、さらなる驚きが待っていました。NK缶(大豆を蒸すための圧力釜)や円盤製麹室といった大型の設備。仕込み回数は年間に50回ほど。FRPタンクに木桶もずらり。仕込み量がとても多く、そのほとんどが佃煮屋さんや焼肉屋さんなどの業務用途だそうです。
醤油づくりと効率性
岡本さんと話していると「効率性」という言葉がたくさんでてくることに気づきました。「こうする方が効率的でしょ」「ここを工夫して効率性をあげたんだよ」などなど。
確かに、どの製造現場でも生産性を高めることは大切なことだと思います。ただ、岡本さんのいう「効率性」は、一般の方が想像する「効率性」とは少しニュアンスが違うように感じます。
よい味噌玉はすくいやすい
溜醤油を仕込む時に、蒸した大豆から味噌玉をつくります。「よい味噌玉はスコップですくった時にすくいやすいんだよ。作業性もいいよね。悪いものはべたついて大変なんだ。よい麹をつくると作業性も向上するんだよね」。
また、木桶仕込みなので桶の個性や季節によっても出来栄えが微妙に異なります。一般的には品質を均一にするために、塩水などで調整を行いますが、岡本さんは塩水は使わないと言います。「溜醤油は香りも大切だと思っているんだ。だから、調整は濃口醤油でする。塩水は使いたくない」と。
岡本さんの効率性
岡本さんの「効率性」は、より安価に低コストでつくることを目指すというよりは、よい醤油をつくるために常に改善を積み重ねないといけないというの意味のように感じます。
それも、学問や醸造学的な観点ではなくて、現場で自分たちが感じたことをベースにした改善点です。膨大な試行錯誤の積み重ねをされているのだと思います。
年間の生産量ってどのくらいなんですか?と質問すると、「ちょっとまって、うそ言っちゃいけないから・・・」とわざわざ帳面を出して数字を確認してくれました。豪快なようで繊細。学問知識より現場での試行錯誤。すてきな蔵元でした。
TEL 059-326-0844 FAX 059-326-0821
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醤油のつくり方
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1
原料処理
カチカチの材料をほくほくにしたり、溶かすことで、菌が材料を醸し、美味しさに変化しやすいようにします。
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2
麹づくり
醤油づくりで一番重要視されている工程です。種麹を原材料に混ぜて、麹菌を繁殖させることで酵素を生み出します。
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3
塩水
麹に塩水を加えて諸味をつくります。塩分濃度を高めることで雑菌から守り長い発酵熟成の時を迎えます。
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4
諸味
ゆっくりと乳酸菌や酵母菌が大豆や小麦を醸します。どろどろの味噌のような状態で、半年~三年の時を過ごします。
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5
圧搾・火入れ
諸味を布に入れて、圧力をかけて圧搾し、火入れとろ過をします。殺菌と香りを引き立てる火入れも技術が必要です。
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6
完成
ビン詰めされてラベルを貼ってようやく完成。長いものだと原料処理から二~三年かけて醤油になります。
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