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親子の葛藤、親子でぶつかる意味

親子でぶつかる、醤油業界の現実

醤油業界において、20代、30代の若手メンバーと話す機会が増えると、しばしば「父親の関係」に悩む声が聞かれます。現社長や会長として会社を牽引する父親との意見の食い違いに、若い世代が直面するのは決して珍しいことではないと思います。

例えば、商品ラインナップに関すること。歴史のある醤油メーカーでは、商品の数が多く、飲食店向けにオリジナル配合の醤油が作られることもしばしば。その結果、「これとこれ、どこが違うの?」と若手が疑問に思うことがよくありますが、父親は長年取引先との関係を築いてきた歴史を重視し、なかなか思い切った変更に踏み切れません。

商品数が多いことで、ラベル印刷や在庫スペース、作業効率にも影響が出ます。統廃合を進めたい息子と、自らが市場開拓をしてきた顧客の顔が浮かぶ父親、それぞれの立場はよく分かります。

親子でぶつかり合う中で見えてくるもの

先日、全国の醤油屋メンバーが集まるイベントの二次会で、広島県の岡本醤油の岡本さんと若手メンバーがテーブルを囲んで話していました。岡本さんといえば、超がつくほどに誠実でやさしい蔵人の代名詞的存在。先代も醤油への愛情が深く、その情熱は誰もが認めるところです。しかし、そんな岡本さんも「親父とはぶつかったし、言い合いになったこともあるよ」と語ります。その時点で、若手メンバーは興味津々。

「世代が違えば、見ている顧客層も違うし、考え方も違う。親子で完全に分かり合うことは難しいことが多い。けど、できる限りぶつかり合うべきだよ」と。その後、続けて「親父がいなくなった後に、分かることがきっとある。自分もそうだったから」と。「おぉぉ!」という声があがり、その話を聞いた皆が深く頷いていました。