醤油の知識
102|今年の秘策?
今年も例年通りゴールデンウィーク明けから本格的に酵母の発酵が始まりました。醤油造りの夏場の作業といえばやはり諸味の櫂入れです。
うちでは週に2~3日行います。櫂入れを行うのは秋から春に仕込んだ新しい諸味で、2年目、3年目を迎える諸味はほとんど混ぜません。
うちでは1年目の夏を越えて発酵が落ち着いたら、桶にビニールを被せています。目的としては、香気成分の揮発を防ぐ事と、産膜酵母の増殖抑制(アルコールの揮発を防ぐ事により)、異物混入を防ぐ、という3つです。
初年度からやっているので、ビニールをしてない物と比較した事は無いのですが、3つとも効果ありだと感じています。 ただ、産膜酵母に関しては全く出ないわけではなく、出ます。その際は撹拌します。で、諸味の表面ではなくビニールが密着している桶の縁(側板の天辺や外側の側面)には産膜酵母やカビが沢山増殖します。
なので、夏から秋にかけて3回程金属のヘラで桶の縁のカビや産膜酵母を取り除きます。 これがよく出る桶は、諸味にも出やすいのです。
この作業がたった3日とは言え、夏場の暑い時期に桶と桶や桶と壁の狭いスペースに入って不安定なはしごに登って行うので、身体もしんどくて服も汚れるので嫌な作業でした。 下の写真が天辺に産膜酵母が増殖した状態(これは少ないほう) 今年はこれをどうにか制御できないかと色々考えました。
そして、思いついたのが塩と酒粕を混ぜたペーストを造り、それを桶の天辺や側面(外側)に塗る。という事です。やはり醤油の原料でもある塩で制御するのが一番かなと。 しかし塩だけだとくっつかないのでダメで、それで接着剤的な役割で酒粕を用いました。
その塩粕を塗ったらこんな状態。 もちろん、塗る前にヘラで菌をそぎ取ります。 諸味を汲み出す際、桶にホースを入れるので天辺の塩粕は多少諸味に落ちる可能性が高く、厳密には原材料に「酒粕」と書かなければいけないのでしょうが、、、
そして、塗った後はビニールを被せます。 梅雨時期に湿気を吸って塩が溶けて流れるような気もしますが、それも含めて暑くなるこれからの経過が楽しみです。
1984年生まれの醤油職人。
高校生の時に自社での醤油醸造の復活を志して東京農業大学 醸造科学科に入学。入学後、「学校に通っているだけでは自分の求めるものは得られない。」ということに気づき、伝統的製法による醤油造りを続けられている醤油蔵を探し、卒業までに7つの醤油蔵で短期間の研修を受け入れて頂く。卒業後、岡本醤油醸造場にて一年間の研修。その後、JFCS(ジャパン・フードコーディネーター・スクール)で一年間学び2009年6月より、実家であるミツル醤油へ入社。2009年11月 夢である醤油造りの復活と、地元・糸島を全国に発信したい。という思いをリンクさせ具現化する、社内別ブランド「itosima terroir」(イトシマ テロワール)をスタート。
ミツル醤油醸造元
醤油の知識ランキング
醤油の種類
-
素材を活かすNo.1選手
白醤油
淡口よりさらに淡い琥珀色の醤油。料理好きな方に高い人気。お吸い物や茶碗蒸しなどに。
詳細 -
美しき京料理に必須
淡口醤油
西日本でお馴染みの淡い色の醤油。素材の彩りや出汁を活かしたい料理に。塩やレモン代わりにかけても。
詳細 -
甘みをつけた地醤油
甘口醤油
九州や北陸などでは一般的な存在。海沿いの地域ほど甘みが強かったり、それぞれの土地に根ざした醤油。
詳細 -
幅広く使える万能醤油
濃口醤油
一般的な醤油で流通量の8割はこれ。新鮮なものは綺麗な赤褐色で、北海道から沖縄まで各地で生産。
詳細 -
濃厚なうま味とコク
再仕込醤油
熟成期間の長い濃厚な醤油。味と香りのバランスがよく、刺身やステーキにまずお試しいただきたい。
詳細 -
濃厚さとうま味はNo.1
溜醤油
大豆を多く、仕込水を少なくし、うま味を凝縮。ハマる方はとことん好きになっていただける醤油。
詳細
醤油のつくり方
-
1
原料処理
カチカチの材料をほくほくにしたり、溶かすことで、菌が材料を醸し、美味しさに変化しやすいようにします。
詳細 -
2
麹づくり
醤油づくりで一番重要視されている工程です。種麹を原材料に混ぜて、麹菌を繁殖させることで酵素を生み出します。
詳細 -
3
塩水
麹に塩水を加えて諸味をつくります。塩分濃度を高めることで雑菌から守り長い発酵熟成の時を迎えます。
詳細 -
4
諸味
ゆっくりと乳酸菌や酵母菌が大豆や小麦を醸します。どろどろの味噌のような状態で、半年~三年の時を過ごします。
詳細 -
5
圧搾・火入れ
諸味を布に入れて、圧力をかけて圧搾し、火入れとろ過をします。殺菌と香りを引き立てる火入れも技術が必要です。
詳細 -
6
完成
ビン詰めされてラベルを貼ってようやく完成。長いものだと原料処理から二~三年かけて醤油になります。
詳細