醤油の知識
一麹、ニ櫂、三火入れ
一麹(いちこうじ)、ニ櫂(にかい)、三火入れ(さんひいれ)
醤油づくりにおいて重要な工程を表現した言い方です。麹づくり、諸味の攪拌、火入れの工程を指すもので、醤油のつくり手に「醤油づくりで大切なことは?」などの質問をすると、このフレーズが返ってくることが多いです。
最初の一麹は麹づくりのことで、蒸した大豆と炒った小麦に麹菌を繁殖させる工程です。この麹の出来栄えによってうま味や香りの良し悪しが決まってくるので、最初にして最大の重要工程となります。
ニ櫂(にかい)は諸味をかき混ぜる攪拌のこと
熟成管理のことです。麹に塩水を混ぜたものが諸味とよばれ、この状態で半年から数年の発酵熟成を過ごすことになります。諸味をかき混ぜることを攪拌(かくはん)といって、昔は櫂棒(かいぼう/長い棒)で行っていたことに由来します。
攪拌をすることで白カビ(産膜酵母)を抑制して、微生物に空気を送り込むのですが、かきまぜなくてもだめ、かきまぜすぎてもだめ。その蔵がおかれている環境や諸味の状況によって適切に管理をすることが大切とされています。
三火入れ(さんひいれ)は搾った醤油に熱を加える工程
ビン詰めをする手前の工程で熱を加える火入れがあります。乳酸菌や酵母菌といった微生物を失活させて活動をストップさせることや、分解されなかったたんぱく質をオリとして固めるなどの目的がありますが、火香とよばれる香りをつけることも大きな目的とされています。
焼とうもろこしや焼き鳥をイメージしていただくと分かりやすいと思いますが、醤油に熱を加えることでアミノカルボニル反応が起こって香ばしい香りがたってきます。温度や時間の調整など微妙な違いが味を左右するもので職人の腕の見せ所。そのレシピは門外不出のものとして守っている蔵元もあります。
どの工程が最も大切か?
「中でもどの工程が一番大切ですか?」と、つくり手に質問すると「麹」という答えが多いように感じています。よい麹ができるとよい酵素が生み出され、大豆や小麦が効率よく分解されます。結果的に「櫂」の工程である諸味の管理もスムーズにいくというものです。
そのようなことを、あるつくり手は「醤油づくりは引き算」だといいます。原料の段階を100点として次の工程で失敗があると減点され、また次の工程で減点されて・・・というもの。一度減点されると加点のチャンスはないので、小さな減点が命取りになってしまうというものです。
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醤油のつくり方
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1
原料処理
カチカチの材料をほくほくにしたり、溶かすことで、菌が材料を醸し、美味しさに変化しやすいようにします。
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2
麹づくり
醤油づくりで一番重要視されている工程です。種麹を原材料に混ぜて、麹菌を繁殖させることで酵素を生み出します。
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3
塩水
麹に塩水を加えて諸味をつくります。塩分濃度を高めることで雑菌から守り長い発酵熟成の時を迎えます。
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4
諸味
ゆっくりと乳酸菌や酵母菌が大豆や小麦を醸します。どろどろの味噌のような状態で、半年~三年の時を過ごします。
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5
圧搾・火入れ
諸味を布に入れて、圧力をかけて圧搾し、火入れとろ過をします。殺菌と香りを引き立てる火入れも技術が必要です。
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6
完成
ビン詰めされてラベルを貼ってようやく完成。長いものだと原料処理から二~三年かけて醤油になります。
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