醤油の知識
醤油は酒みたいに長く熟成させるとおいしくなるの?
30年ものの諸味との出会い
昔、30年くらい熟成させた諸味に出会ったことがあります。「出荷をするタイミングを失ってしまってね…」と、蔵人は苦笑いをしていましたが、意図してつくったものではなく、たまたま残ってしまったものです。醤油は塩分で守られているので、まぁ、大丈夫だろうと味をみてみましたが、お世辞にもおいしいとは言えませんでした…。
お酒だと、何十年という長期熟成がありますよね。まろやかな味わいになったり、多様なで複雑な香りが現れたり、よい方向に変化することもあると思いますが、醤油の場合は長期の熟成=おいしくなるとは必ずしも言えないように感じています。
「諸味」と「液体の醤油」の場面での熟成
そもそも、2つの場面に分けて考える必要がありそうです。一つは諸味の状態、つまり圧搾する前の状態で乳酸菌や酵母菌などの微生物が活躍している期間も含めた状態の時。もう一つは、圧搾してビン詰めされた後、つまり、液体としての醤油になった後の状態の時です。
まず、ビン詰めされた後については、時間が経つほどに劣化してしまうと思います。ビン詰めする前に火入れという加熱をする工程があります。そこで微生物は失活するので発酵が進むことはありません。確かに、ビン詰め後、1か月くらいすると調和が取れて一番おいしいというつくり手もいますが、基本的には酸化による変化の方が上回ってしまう印象をもっています。開栓前であれば比較的問題ないと思いますが、特に開栓した後はできる限り早く使いきることをお勧めします。開栓して1か月も経つと、別の物といえるくらいに変化していると思います。
種類によっては熟成させないほうがよい時も
そして、もう一つの諸味の状態での熟成についてです。醤油は数か月から1年、長いもので2年から3年の発酵と熟成の時間を過ごしますが、これは醤油の種類に応じて、どのような特徴を出したいかによって異なります。
白醤油や淡口醤油など色を付けたくないタイプは、短期間で仕込みをすることで色鮮やかでフレッシュな味わいを目指すため、熟成はさせない方向になります。一方、再仕込醤油や溜醤油など濃厚な醤油は熟成にかける時間を要します。それによって、塩カドが少なくなるという表現をしたりしますが、塩味の感じ方がマイルドになったり、奥行きのある複雑で多様な香りも生み出されると思います。
よい変化と劣化が同時に起きる
ただ、これも長ければ長い程よいかというとそうではなくて、上記のようなよい方向性の変化と、空気と触れることで酸化が進み、劣化につながる変化も同時に起こります。ある一定のタイミングから、劣化の方が上回ってしまうので、長く時間を過ごせばよいものではないと感じています。ちょうどよい搾るタイミングを見極めるのも、蔵人の腕の見せ所といえると思います。
醤油の知識ランキング
醤油の種類
-
素材を活かすNo.1選手
白醤油
淡口よりさらに淡い琥珀色の醤油。料理好きな方に高い人気。お吸い物や茶碗蒸しなどに。
詳細 -
美しき京料理に必須
淡口醤油
西日本でお馴染みの淡い色の醤油。素材の彩りや出汁を活かしたい料理に。塩やレモン代わりにかけても。
詳細 -
甘みをつけた地醤油
甘口醤油
九州や北陸などでは一般的な存在。海沿いの地域ほど甘みが強かったり、それぞれの土地に根ざした醤油。
詳細 -
幅広く使える万能醤油
濃口醤油
一般的な醤油で流通量の8割はこれ。新鮮なものは綺麗な赤褐色で、北海道から沖縄まで各地で生産。
詳細 -
濃厚なうま味とコク
再仕込醤油
熟成期間の長い濃厚な醤油。味と香りのバランスがよく、刺身やステーキにまずお試しいただきたい。
詳細 -
濃厚さとうま味はNo.1
溜醤油
大豆を多く、仕込水を少なくし、うま味を凝縮。ハマる方はとことん好きになっていただける醤油。
詳細
醤油のつくり方
-
1
原料処理
カチカチの材料をほくほくにしたり、溶かすことで、菌が材料を醸し、美味しさに変化しやすいようにします。
詳細 -
2
麹づくり
醤油づくりで一番重要視されている工程です。種麹を原材料に混ぜて、麹菌を繁殖させることで酵素を生み出します。
詳細 -
3
塩水
麹に塩水を加えて諸味をつくります。塩分濃度を高めることで雑菌から守り長い発酵熟成の時を迎えます。
詳細 -
4
諸味
ゆっくりと乳酸菌や酵母菌が大豆や小麦を醸します。どろどろの味噌のような状態で、半年~三年の時を過ごします。
詳細 -
5
圧搾・火入れ
諸味を布に入れて、圧力をかけて圧搾し、火入れとろ過をします。殺菌と香りを引き立てる火入れも技術が必要です。
詳細 -
6
完成
ビン詰めされてラベルを貼ってようやく完成。長いものだと原料処理から二~三年かけて醤油になります。
詳細