醤油の知識
045|秘蔵の酵母(2)
そんな流れから、賛否両論あると思いますが酵母添加をすることにしました。 醤油用の酵母は種麹メーカーなどで販売されていますが、それは使いません。 (とても優秀な酵母だと思いますが。)
使う酵母はこれです。
瓶の中に酵母が保存されているのですが、これは僕が大学4年生の時に分離した酵母です。サンプルを採取した場所は、うちが昔仕込みをやっていた時の仕込み蔵の梁です。
↓当時、親に頼んで表面をガリガリと削って、何度も送ってもらいました。
もちろんこの酵母を分離した理由は、仕込みを再開した時に使うため。 昔の仕込み蔵から分離された酵母は、間違いなく祖父が仕込んでいた諸味にいた酵母です。 つまりこの酵母を使うことで、昔のミツル醤油の香りや個性に近い物が再現できるのではないかと思ったのです。
本来、この酵母はまだ何年後かくらいに特別な商品として使おうと思っていたのですが、1年目から登場することになりました。
下の写真は、当時の最初の培養液。
この段階では色々な微生物が混在しているので、過酷な条件で培養しました。 そこから何度も培養を繰り返して、酵母だけを分離します。(主発酵酵母を)
下の写真は酵母だけが培養された状態。(底の白いのが酵母です)
シールのNo7というのは、最初の段階から7回目の培養という意味です。
ちなみにこの酵母は当時、韓国のメーカーから出向されていたチェさんが「イイコウボデス!」と言ってくれたので、(培養液の香りで) 良い酵母です。 たぶん。
そして、この酵母を諸味に添加するためには、大きな量で培養しなければいけません。
そのために、いつもお世話になっている醤油組合の大場さんにお願いして、No7酵母の予備培養してもらいました。それが下の状態。真っ白で酵母がいっぱい。
この酵母を培地(醤油・ブドウ糖・塩)の中に入れて、麹室で保温しながら培養し、
酵母添加できる状態になりました。
1984年生まれの醤油職人。
高校生の時に自社での醤油醸造の復活を志して東京農業大学 醸造科学科に入学。入学後、「学校に通っているだけでは自分の求めるものは得られない。」ということに気づき、伝統的製法による醤油造りを続けられている醤油蔵を探し、卒業までに7つの醤油蔵で短期間の研修を受け入れて頂く。卒業後、岡本醤油醸造場にて一年間の研修。その後、JFCS(ジャパン・フードコーディネーター・スクール)で一年間学び2009年6月より、実家であるミツル醤油へ入社。2009年11月 夢である醤油造りの復活と、地元・糸島を全国に発信したい。という思いをリンクさせ具現化する、社内別ブランド「itosima terroir」(イトシマ テロワール)をスタート。
ミツル醤油醸造元
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1
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カチカチの材料をほくほくにしたり、溶かすことで、菌が材料を醸し、美味しさに変化しやすいようにします。
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2
麹づくり
醤油づくりで一番重要視されている工程です。種麹を原材料に混ぜて、麹菌を繁殖させることで酵素を生み出します。
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3
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4
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5
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6
完成
ビン詰めされてラベルを貼ってようやく完成。長いものだと原料処理から二~三年かけて醤油になります。
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