醤油の知識

086|10水

新年、あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、昨年は11月で更新がストップしてしまいご報告遅れましたが、11月に20石の木桶1本分の仕込みを行いました。そして、12月は出荷に専念して年明けからまた仕込みを再開しております。

下の写真は、つい先日仕込んだ10水仕込みの諸味です。10水というのは、原料に対する塩水の量の事です。標準的な濃口が12水と言われていて(もちろんメーカーさんによって前後します。)ちなみに、うちは11水です。

で、今回は初の10水にチャレンジしてみました。きっかけは、横塚 保さんの著書「日本の醤油」の中で、「…(丸大豆52:小麦48、 10.3水仕込み)の醤油を最高と信じておられた茂木 房五郎 社長は、…」という文章があり、ずっと10水仕込みの醤油(本では10.3水ですが)に興味があったのでした。(*本文の年代は昭和44年頃の話しです。)

で、実際仕込んでみると、これが想像を絶する水分の少なさで、とても櫂棒では混ぜられず結局手で混ぜまぜました。 混ぜるというか、掘る。という表現がピッタリな感じです。



そんな状況になって動揺しましたが、とりあえず最低限、麹に塩水が浸透していない。という状況だけは避けたかったので、表面をビニールで覆い味噌の入った段ボールを重しとして乗せました。 

この諸味はある程度原料が分解しても、櫂では混ぜられない気もしますが、勉強のためにしばらくはこのままにして、様子を見つつ塩水を足すか、判断したいと思います。

城 慶典 (ミツル醤油醸造元)

1984年生まれの醤油職人。
高校生の時に自社での醤油醸造の復活を志して東京農業大学 醸造科学科に入学。入学後、「学校に通っているだけでは自分の求めるものは得られない。」ということに気づき、伝統的製法による醤油造りを続けられている醤油蔵を探し、卒業までに7つの醤油蔵で短期間の研修を受け入れて頂く。卒業後、岡本醤油醸造場にて一年間の研修。その後、JFCS(ジャパン・フードコーディネーター・スクール)で一年間学び2009年6月より、実家であるミツル醤油へ入社。2009年11月 夢である醤油造りの復活と、地元・糸島を全国に発信したい。という思いをリンクさせ具現化する、社内別ブランド「itosima terroir」(イトシマ テロワール)をスタート。

ミツル醤油醸造元