醤油の知識
東海醸造(三重県鈴鹿市)
コミュニケーションを大切にする溜醤油の蔵元
「大根、ひじき、きんぴらごぼう、最後に溜醤油をちょこっと足してみてください。いもの天ぷらに豆味噌をのせるのもおいしいですよ」と、蔵見学に訪れた方に話しかけるのは本地猛さん。
夏を4回過ごす3年半ほどの熟成。東海醸造が手掛ける溜醤油と豆味噌は長期熟成です。もちろん、そのような製法に関する解説もしていますが、それよりも、醤油や味噌を使う側の立場に立った会話をしていることが印象的でした。
一本の桶で溜醤油と豆味噌をつくる
そのつくり方も少し独特です。
大豆を蒸して味噌玉にしたものを桶に入れたら、その上に石載せてじっと待ちます。くみかけも天地返しをすることもなく、大豆にすべてを託して4度の夏を超えるまでひたすら待つのです。
そして、桶の底に溜まった液体は溜醤油に、上の部分は掘り出して豆味噌になります。他の蔵元の場合だと、この桶は溜醤油、この桶は豆味噌と別々に仕込むことが多いように感じますが、東海醸造の場合は一本の桶から溜醤油と豆味噌ができるのです。
ものが言い合える関係
「平成の時代になって廃業していく同業者が多くなりました」と本地さん。そして、ちょうどそのタイミングで起こってきたのが地産地消の動きで、東海醸造でも商品を少量化にすることに伴って蔵に来てくれる方が増えてきたそうです。
すると、「ラベルが悪い!キャップの色がダサい!」からはじまって、いろいろな意見を直接耳にする機会が増えてきたといいます。「豆味噌や溜醤油を使ってくださる方と顔を合わせることを通して変わってきたことが多いです。お互いにものが言える関係ですよね」と。
三重県出身の方からの「地元の味だ!」「なつかしい!」という声を聞くたびに格別の嬉しさを感じるそうです。
味噌の「噌」という字
「味噌づくり教室をした時のことなのですが、参加者の方からお手紙をいただいたんです。子育てのいい気分転換になったと、すごく楽しかったという内容でした。そのことが私自身、すごくうれしかったんです」。
「味噌の『噌』という文字の口偏はテーブル、日はかまど、田は蒸籠(せいろ)、その上の2つの点はゆげを表しているそうです。蒸気で蒸している様子で、意味合いはわいわいがやがや。まさにこの時にシチュエーションを表しているように感じました。味噌づくりがコミュニケーションになったんですよね」。
石の下にも3年。
「仕込みをしてからの3年間。長いようですがあっという間です。桶に積まれた石を下ろす時、あんなことがあったな、こんなことがあったなと3年間を振り返るのですが、毎年どきどきしながらその時を待っています」。石の下にも3年。本地さんに見守られながら、今日も東海醸造ではゆっくりと熟成の時が進んでいます。
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醤油のつくり方
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1
原料処理
カチカチの材料をほくほくにしたり、溶かすことで、菌が材料を醸し、美味しさに変化しやすいようにします。
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2
麹づくり
醤油づくりで一番重要視されている工程です。種麹を原材料に混ぜて、麹菌を繁殖させることで酵素を生み出します。
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3
塩水
麹に塩水を加えて諸味をつくります。塩分濃度を高めることで雑菌から守り長い発酵熟成の時を迎えます。
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4
諸味
ゆっくりと乳酸菌や酵母菌が大豆や小麦を醸します。どろどろの味噌のような状態で、半年~三年の時を過ごします。
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5
圧搾・火入れ
諸味を布に入れて、圧力をかけて圧搾し、火入れとろ過をします。殺菌と香りを引き立てる火入れも技術が必要です。
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6
完成
ビン詰めされてラベルを貼ってようやく完成。長いものだと原料処理から二~三年かけて醤油になります。
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