醤油の知識

木桶醤油の生産量1%の根拠

木桶醤油の生産量1%の根拠

木桶醤油の生産量について、正確な統計データは存在していません。しょうゆ情報センターが毎年公表している「醤油の統計資料」にはメーカー数や都道府県ごとの出荷量が掲載されていますが、木桶に限定したデータは集計されていません。

小豆島のヤマロク醤油が2010年ごろに開始した「木桶職人復活プロジェクト」において、おおよその数値を以下のように算出し、当時の木桶醤油の流通量は1%とすることにしました。


算出式

1)全国で稼働している木桶の数
2010年当時、国内唯一の大桶の職人集団である藤井製桶所の熟練職人によると、全国で現役稼働している木桶はおよそ3000本と推定されていました。

2)木桶に入る諸味量
木桶の容量は地域によって異なり、20石(3600リットル)、30石(5400リットル)などの大きさがあります。醤油の元となる「諸味」を余裕を持って入れると仮定し、1本あたりの平均容量を4000リットルとしました。

3)諸味を搾って醤油になる量
熟成された諸味を圧搾すると、醤油と搾り粕に分けられます。圧搾率は蔵ごとに異なりますが、平均として80%が醤油になると仮定しました。

4)熟成期間
熟成期間は1年から3年の幅があり、再仕込醤油の場合は倍の時間が必要です。年間生産量を算出するために、1.5年で1回の生産サイクルとしました。

これらの数値を基に、以下のような式が成り立ちます。
3000本×4000リットル×0.8÷1.5=6,400 kL
2010年時点での醤油流通量が約85万キロリットルだったことから、木桶醤油の生産量は全体の1%未満と推定されました。

醤油流通量の推移(10年ごと)

1970年:1,125,742 kL
1980年:1,190,425 kL
1990年:1,176,187 kL
2000年:1,061,475 kL
2010年:848,926 kL
*しょうゆ情報センター(統計資料ダウンロードより)

最新調査による推定

2021年、東京聖栄大学の福留奈美先生による「醤油醸造用木桶の使用実態に関する全国調査」によれば、全国に木桶が4750本あるとされています。この数値を当てはめると、2023年の醤油流通量に対して木桶醤油の流通量は約1.5%と推定されます。
4750本×4000リットル×0.8÷1.5=6,400 kL=10,133 kL
こうした推定から、木桶醤油は全体の1%から1.5%の範囲で生産されていると考えられます。 *醤油醸造用木桶の使用実態に関する全国調査