醤油の知識
しろたまりマエストロ講座②:「しろたまり」の誕生と背景
「しろたまり」の誕生と背景
「しろたまり」が誕生したのは1993年。当初は、白醤油の欠点を補うために開発がスタートしたそうです。白醤油は、醤油の中でも最も色が淡いのが特徴ですが、うま味が少ないという課題がありました。
一般的な濃口醤油では、大豆と小麦がほぼ同量使われていますが、大豆が増えると醤油の色も濃くなるため、白醤油では小麦を多めに、大豆を少なくしています。また、色が濃くならないよう塩分濃度を高める必要があり、そのために味がしょっぱく感じられやすくなっていました。このため、色を付けたくない料理に使われ、板前さん専用の醤油として認識されていた時期もあったといいます。
この「しょっぱさ」の印象を改善するため、蜷川さんは甘みを増やすことで塩味を感じにくくすることを考えました。そこで甘みの元になる小麦の量を増やそうとしたのですが、それは色を濃くする要因にもなります。試行錯誤の末、その他の色を濃くする要因を一つづつ排除していった結果、大豆を使用しない配合にたどり着きました。
国産原料へのこだわりと醸造環境の変化
「しろたまり」の開発が進む中で、蜷川さんは国産の原料にこだわり、最後に水の見直しに着手しました。本社工場にも井戸水はありましたが、井戸水の使用には保健所が難色を示したそうです。「保健所の意見には一理あると思いました。井戸水の水質は変わりやすい。ここ碧南市は川の下流に位置するので、その影響も受けやすいですから」。
そこで、水探しをした蜷川さんはさらにさらに上流に位置する愛知県の足助町にたどりつきました。保健所と協議を重ねた結果、ここの井戸水を使えるようになりました。
足助町は本社工場よりも気温が6〜7度低い冷涼な地域。廃校となった校舎を借り受け、そこに酒蔵から譲り受けた木桶を並べることで、仕込みの水、醸造環境、仕込み容器を整えました。
「昔は全て木桶で仕込んでいましたから」と蜷川さん。「高度成長期に起こった変化は、どの業界も同じだけど、屋外発酵タンクを使うことで衛生的になり品質も均一にできるようになる。消費者にとっては、安くて安定的になるけど、昔の醤油はちょっと違ったよね、というのが先代がよく話をしていたことなんです」と蜷川さん。親子2代で追求したきたのが「しろたまり」というわけなのです。
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醤油のつくり方
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1
原料処理
カチカチの材料をほくほくにしたり、溶かすことで、菌が材料を醸し、美味しさに変化しやすいようにします。
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2
麹づくり
醤油づくりで一番重要視されている工程です。種麹を原材料に混ぜて、麹菌を繁殖させることで酵素を生み出します。
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3
塩水
麹に塩水を加えて諸味をつくります。塩分濃度を高めることで雑菌から守り長い発酵熟成の時を迎えます。
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4
諸味
ゆっくりと乳酸菌や酵母菌が大豆や小麦を醸します。どろどろの味噌のような状態で、半年~三年の時を過ごします。
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5
圧搾・火入れ
諸味を布に入れて、圧力をかけて圧搾し、火入れとろ過をします。殺菌と香りを引き立てる火入れも技術が必要です。
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6
完成
ビン詰めされてラベルを貼ってようやく完成。長いものだと原料処理から二~三年かけて醤油になります。
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