醤油の知識

大好物醤油の誕生物語①

2019年2月、突然1通のメールが届きました。長文のメッセージ。自分がいかに醤油好きかが綴られています。そして、最後の署名欄に「博報堂」と記されていました。日本を代表する広告代理店の名前は誰もが知るところですが、うちのような小さな組織とは無縁であることも知っています。

博報堂から醤油愛に満ちたメール、疑問符しか浮かびませんでしたが、よくよく読んでみると、会って話をしたいという申し出でした。話すだけならと返信して、神楽坂の珈琲館で待ち合わせることになりました。

そこに現れたのは小泉和信さん。イケイケな業界人的イメージとは真逆の物腰の柔らかそうな若者でした。少し緊張気味な小泉さんと3時間ほど醤油談議をすると、「やはり、醤油はめちゃくちゃ面白いですね」という反応。そして、アイデアをプレゼンしていいですか?と提案してくれました。

そして、1か月後に博報堂の本社である赤坂に伺うことに。

赤坂駅直結のタワービル。スターバックスが入る広々としたロビーフロアで小泉さんが迎えてくれ、上階へと向かうエレベーターから東京の街並みが一望できるプレゼンルームへと到着。そこには、厚さ1センチほどにもなる分厚いプリント資料と、作り込まれたプレゼン資料がプロジェクターで映し出されていました。

相当時間かかったでしょ?!と思うほどのつくり込まれたもの。醤油に関するアイデアは10個にとどまらず、ビジュアルもかっこいいし、見た目も素敵。東京のおしゃれな街に溶け込みそうだし、話題にもなりそうなたくさんのアイデア。そんな紹介を1時間くらいしてくれました。

全部を聞いた後、「どうでした?」という若者メンバーたち。どのように答えるべきか悩みました。でも、思ったとおりのことを言おうと思い、「ぜんぶのアイデア、かっこいいし、素敵だと思う。けど、自分が、自分事として、どれをしたいかと問われれば、ちょっとちがう気がするんです」。一瞬の沈黙があって、「えぇ…っと、あの、1個も、ですか???」と顔面蒼白状態の彼らの表情は、今でも覚えています。

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