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掃除道具が語る蔵元の品質と精神性

きれいな現場と品質の関係性

「よい蔵元の条件は?」と、質問されることがあります。もちろん、一つに絞れるはずはなくて、いろいろありますが、「現場がきれい」というのは一つあるように感じています。

もちろん、醤油の製造現場なので、創業から100年以上なんてことは珍しくなく、建物が重要文化財に指定されていることもあります。また、醤油は発酵によってつくられるため、長年すみついている微生物を考慮して、この部分は掃除をしないと決めている個所があったりもします。そのため、「新しい」とか「ピカピカ」とは少し違う現場のきれいさがあるように思います。

秋田県の石孫本店さんはその代表格。製造工程は昔のまま。小麦を石炭で炒っているところは全国を探してもほとんどないはずです。そして、社長の石川さんは「道具を残すこと、守り続けることが大切な仕事のひとつ」と言います。

そんな石孫本店の現場は、いつも掃除が行き届いています。掃除されてるって感じが床や壁から伝わってくるというか、余計なものが置いてなくて、仕込みや掃除に使う道具もきちっと整頓されている。山の中の神社に行った時のように、しゅっと身が引き締まる感じがするんです。

他の蔵元でも、例えば、事務所であったり、ダンボールなどの包材が保管されている場所がきれいに整理整頓されていると、醤油の製造工程でもきめ細かく向き合っているんだろうなって想像してしまいます。