醤油の知識
煮アナゴと醤油。酢飯屋さんとの一魚一醤イベントレポート
酢飯屋・岡田大介さんと一魚一醤の第2段
この寿司にはどの醤油が合うのか?実際に寿司と醤油を食しながら探っていこうというイベント「一魚一醤」。1回目は赤身と白身を5カンづつ用意して醤油との相性を探っていきましたが、今回のテーマは「煮アナゴ」です。
1回目の様子はこちらから
https://www.s-shoyu.com/knowledge/sumeshiya1
6種類の醤油でつくる煮アナゴ
予想以上に色の違いがはっきりと分かれました。白醤油はやはりというか、ほぼ色が付かずに真っ白。淡口醤油から濃口醤油にかけてうっすら色が付いてきて、再仕込醤油や溜醤油はしっかりと色が付いています。
「砂糖の量や煮る条件は同じにしました」と、酢飯屋の岡田さん。ただ、甘口醤油はそのままでもかなり甘味があるので、この醤油に限って砂糖は入れなかったそうです。
まずは、醤油の好みの認識を
醤油だけを直接なめて、一番おいしいと思ったものに「〇」、苦手なものに「×」をつけてもらいました。一通り味を見ていただいた後に挙手をして今日の一番人気の醤油を集計。その結果が以下です。
再仕込醤油が人気で、白醤油は不人気。
今回は再仕込醤油が〇 5人/× 0人と人気で、白醤油が〇 0人/× 3人と不人気な傾向でした。ただ、いつも必ずあることなのですが、淡口醤油が〇 2人/× 2人となるように、同じ醤油でも評価が真逆になることがあります。
続いて、煮アナゴでも第一印象を。
続いてお待ちかねの煮アナゴです。1カンを半分に切った大きさで食し、一番おいしく感じたものを選んでいただきました。会場は静まり返って、皆さん黙々と吟味する時間が続きます。そして、その結果が以下です。
白醤油と淡口醤油が人気に
一番人気は白醤油。これは醤油だけをなめた時には〇 0人/× 3人だった醤油です。そのままのときには誰も一番おいしいとは思わなかった醤油が、煮アナゴにするとこれが一番という結果になりました。
岡田さんによる解説が見事
この結果を踏まえながら岡田さんの解説がスタートです。岡田さんが感じる醤油の印象から煮アナゴにしたときの味わいの違いなど。理路整然とした解説に参加者の方はうんうん頷きながら聞き入っていました。
アナゴがおいしい白醤油
お寿司の中でも玉子や煮アナゴは、甘いほうがおいしいと感じやすいそうです。その意味でも甘さを感じやすくて、醤油感は控えめ。アナゴそのものを味わっている感じのする印象です。
醤油の香ばしさが加わる淡口醤油
白醤油のアナゴの素材と甘さを感じるところに、醤油の香ばしさが加わってくる印象です。醤油らしさのよい部分が加わり、甘味と塩味のバランスもよく岡田さんはお気に入りだそうです。
甘さの調整が難しいかもしれない甘口醤油
そのままなめると甘さの強い甘口醤油。そのため、今回はこの煮アナゴだけ砂糖を加えなかったそうです。ところが、煮アナゴにすると醤油で感じたほどの甘さが出てこずに、おかずのような印象に。
やはり安定の濃口醤油
最もスタンダードな種類である濃口醤油。煮アナゴにしても安定感は抜群です。岡田さんも今までは煮アナゴには濃口醤油だったそうで、多くの寿司屋さんもこの種類をベースにしている方が多いと思います。
濃厚な再仕込醤油
熟成期間の長い再仕込醤油。うま味も色も濃いので、煮アナゴにしてときも濃い色合いになります。味わいは率直に「うまい」という印象。奥行のあるうまみで、後味がぐぐっ~とうま味が追いかけてきます。
ただ、醤油のうま味が強いので、アナゴの味わいが前面にでてくるのとは違ったおいしさ。「醤油を強く感じる」という印象のようです。
深い甘味の溜醤油
うま味の成分が一番多いのがこの溜醤油。酢飯も引き立ててくれる深いうま味という印象で、これも再仕込醤油同様にうまいのです。
ただ、アナゴと醤油が一体になったうま味なので、アナゴそのものの味わいという点からすると「穴子が美味しいのか、醤油の旨味なのか、何が美味しいのかちょっとぼやけてしまう」という印象のようです。
「試したことも、試そうとも思っていなかった・・・」
岡田さんの言葉で印象的だったのがこの言葉でした。今まで濃口醤油で煮アナゴを煮ていたそうですが、特に不満はなかったそうです。十分においしかったし、お客さんも喜んでくれていたはず。
でも、今回の比較は、「全く想像もしていなかった結果」だったそうです。楽しそうに唸っている岡田さんの姿が印象的で、このような試行錯誤をしてくれる料理人さんがいることがとても嬉しいことです。
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醤油の種類
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素材を活かすNo.1選手
白醤油
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美しき京料理に必須
淡口醤油
西日本でお馴染みの淡い色の醤油。素材の彩りや出汁を活かしたい料理に。塩やレモン代わりにかけても。
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甘みをつけた地醤油
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九州や北陸などでは一般的な存在。海沿いの地域ほど甘みが強かったり、それぞれの土地に根ざした醤油。
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幅広く使える万能醤油
濃口醤油
一般的な醤油で流通量の8割はこれ。新鮮なものは綺麗な赤褐色で、北海道から沖縄まで各地で生産。
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濃厚さとうま味はNo.1
溜醤油
大豆を多く、仕込水を少なくし、うま味を凝縮。ハマる方はとことん好きになっていただける醤油。
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醤油のつくり方
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1
原料処理
カチカチの材料をほくほくにしたり、溶かすことで、菌が材料を醸し、美味しさに変化しやすいようにします。
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2
麹づくり
醤油づくりで一番重要視されている工程です。種麹を原材料に混ぜて、麹菌を繁殖させることで酵素を生み出します。
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3
塩水
麹に塩水を加えて諸味をつくります。塩分濃度を高めることで雑菌から守り長い発酵熟成の時を迎えます。
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4
諸味
ゆっくりと乳酸菌や酵母菌が大豆や小麦を醸します。どろどろの味噌のような状態で、半年~三年の時を過ごします。
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5
圧搾・火入れ
諸味を布に入れて、圧力をかけて圧搾し、火入れとろ過をします。殺菌と香りを引き立てる火入れも技術が必要です。
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6
完成
ビン詰めされてラベルを貼ってようやく完成。長いものだと原料処理から二~三年かけて醤油になります。
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