職人醤油の蔵元
ヤマロク醤油
子や孫の世代に木桶を残す
木桶仕込み醤油が見直されています。今でこそ、メディアで取り上げられる機会も増えてきましたが、2000年頃まで木桶は減少の一途をたどっていました。そして、この木桶業界に新たな風を吹き込んだのがヤマロク醤油の山本康夫さんなのです。
昔は、醤油に限らず味噌や日本酒など日本の伝統的な調味料は木桶で仕込まれていましたが、生産効率を追求する流れの中で木桶は減少。木桶醤油の流通量はわずか1%ほどになり、2010年頃には醤油を仕込むような大桶を組み上げる職人も1社のみになっていました。
絶滅寸前だった木桶
木桶の寿命は100~150年程。今、現役で使われている木桶はあと数十年は使えるものの、50年、100年後には使えなくなってしまいます。すぐになくなることはないけど、少し先の将来にほぼ絶滅すると思われていたのが木桶の状況でした。
ヤマロク醤油のある小豆島は、瀬戸内海に浮かぶ島。小豆島といえば木桶醤油といわれるように、1,000本以上の木桶が現役で活躍しています。「蔵の中にある桶は何代も前の先祖が残してくれたものです。この先、孫の代に木桶を残すために逆算をするとと、今このタイミングで自分たちが手を打たないといけないと思ったんです」と山本さん。
2012年2月 桶修行のために大阪へ
当時、大阪府堺市に大桶を組み上げることができる唯一の職人集団である藤井製桶所がありました。山本さんは銀行から借金をして新桶を発注します。すると、「醤油屋から発注があったのは戦後初だよ」という驚きの反応と共に「ただ、おれたちもいい歳だから、もうすぐ引退するよ」という返答があったそうです。
桶もつくるし、醤油もつくる
それならばと、山本さんは小豆島の大工と共に修行に出向き、自分たちで桶づくりから手掛ける決心をします。その翌年の2013年9月、自分たちだけで新桶を完成させるに至ります。
設計図のないはじめての新桶づくりはトラブルの連続。職人の技術の蓄積のすごみを感じながら4日かけてようやく完成。後日、出来栄えを確認しに来た師匠からも「上出来だ!」と太鼓判を押され、一同ほっと胸をなでおろしました。
木桶職人復活プロジェクト
木桶仕込み醤油の流通量は全体の1%ほど。そのわずか1%を全国の小規模な醤油蔵で奪い合うよりも、皆で連携をして1%を2%にしよう、と山本さんは全国の蔵元に声をかけました。
木桶のメンテナンス方法や技術もオープンにして共有しようという取り組みです。最初は二の足を踏んでいた他の蔵元たちも、年を重ねる毎に参加者が増えてきて、毎年1月に小豆島に集まることが定番化してきました。木桶職人復活プロジェクトとして、横の連携が進んでいます。
いつでも見学できる醤油蔵
醤油蔵が多く集まる小豆島で、ヤマロク醤油は「奥座敷」と表現されています。たどり着くのが難しい立地なのです。ただ、それにも関わらず365日、観光客で賑わっています。
予約なしで見学が可能。蔵の中までしっかりと案内をしてくれます。一歩踏み入ると、搾る前の醤油諸味の香りに包まれ、そこは別次元と思えるくらいに薄暗く静まり返った空間。五感で体験することができる蔵見学は、すっかり小豆島の観光地スポットになっています。
いつも前のめりの姿勢が醤油の味にも表れている
「ちょっと仕込みの方法を変えてみたんです」と、山本さんがよく話をします。醤油の成分を分析して数値で捉えることと、醤油の見た目や香りや感触との両面から常に捉えていて、「理屈から考えると、こうした方がよいはず」と小さな改善を積み重ねています。
「うちの醤油はめちゃめちゃうま味がつまって濃いですよ」に、誰もが納得するくらい濃厚な醤油。最近は海を越えて海外からもヤマロク醤油を指名する引き合いが増えています。
小豆島観光に欠かせない醤油蔵
価格 : 600円+税
原材料 :大豆(国産)、小麦(国産)、食塩
黒大豆原料であっさりとキレが共存
価格 :600円+税
原材料 :大豆(国産)、小麦(国産)、食塩