職人醤油の蔵元
山本屋糀店
試行錯誤の経験値を大切に、最高の品質を
「創業年は不明なのですが、帳面の記録から200年以上前から糀の販売をしていたと思います」と話す小宮山利幸さん。長野県で米麹、甘酒、醤油、味噌の製造を行っていて、2023年に行われた第50回の全国醤油品評会で最高賞である農林水産大臣賞を受賞しました。
会社名にもる「糀」づくりにかける想いは格別で、「糀は和食文化の原点です。大切にしたいし、より質の高いものをつくりたい」と話します。
過去6度の農林水産大臣賞
山本屋糀店は全国醤油品評会で第36回、37回、40回、42回、43回、50回で農林水産大臣賞を受賞しています。これほどの受賞経験は珍しいのですが、醤油づくりをはじめたのは小宮山さんの代からだといいます。
自家用醤油の圧搾で家々をまわる
「先代の頃は、醤油麹を各家庭に販売をして、自家用醤油の圧搾と火入れのために家々を訪問していました。多い時は日に3軒をまわって醤油搾りをしていたと思いますよ」と小宮さん。今では珍しくなっていますが、大豆と小麦を醤油麹にして販売。近所の一般家庭が購入して、自宅で醤油を発酵熟成させるわけです。それを圧搾するために先代が家々をまわっていたというのです。
研究者のようないでたちの小宮山さん
小宮山さんは東京農業大学で舘博先生に師事し、乳酸菌の研究の日々を過ごし、調味料の営業職を経て26歳で家業に戻ってきました。その後も研究の日々は続き、「糀は他社の製品を分析もしながら、麹の力を最大限に高めるために試行錯誤してきました。菌糸が米の内側まで伸びていくように水分を保ちながら管理をするのが難しいですね」。
醤油づくりも同様で、特に火入れ作業には1℃単位、1分単位での独自の理論がある。「この温度まで上げて、これだけの時間保持します。すると、オリが凝集するんですよ」という語り口は研究者のよう。
「和食の文化の原点が麹。伝統文化を残したい。でも、ベースにあるのは、私が醤油、味噌、酒も、発酵が大好きなんですよね。飽きることがないですよ」と笑います。