職人醤油の蔵元
正金醤油
謙虚で控えめ。だからこその存在感。
120本の木桶を有する。大豆も小麦も国内産で、製造ロット毎の産地をホームページで公開している。たけど、「うちなんか、まだまだです」と、自慢する素振りが微塵もない。だからこそかもしれない。この蔵にはファンがとても多い。
醤の郷で木桶120本
醤油の産地としても有名な香川県の小豆島。17の醤油蔵が軒を連ねる地域に正金醤油の蔵はあります。山吉蔵、西蔵、東蔵といったように歩ける範囲内に複数の蔵を抱え、その中に並ぶ桶は120本。この保有数は日本屈指です。
一歩入ると空気が変わる。 あぁ、いい香り。
蔵の中では何十年と使い続けられている桶が出迎えてくれます。階段を使って桶の上部にあがると漂ってくる香り。言葉通りの心地よい香りに包まれます。
言われないと、気づかないかもしれませんが・・・
この写真、かなりすごいのです。
何がすごいかって?!床や桶のふちの尋常でない綺麗さです。諸味は撹拌といって定期的にかき混ぜるのですが、そのはね返りが必ず生じます。それらを毎回綺麗にふき取っているからこその、この状態なのです。
桶だからよいというわけではない。
「昔、父に連れられて大阪まで配達に行っていました。トラックにかぶせていた幌を外すと、なんともいえない良い香りが漂ってきたのが印象に残っています」。その時から蔵の中を綺麗にすることは徹底しているそうです。
桶が空になればしっかり洗浄して次の仕込みに備えます。悪い香りがつかないように入念に管理をされる藤井さんの姿勢を見ると、桶だから美味しい醤油になるのではなく、その管理が大切なのだと実感します。
どんな醤油を目指すのか?
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醤油が美味しくなりすぎている気がするんです。
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どういうことですか?
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親父の代には、取引先からは大手さんを引き合いに出されて「これよりも美味しくて安いものを持ってこい!なんてよく言われたそうです」。
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大量生産の時代ですね。
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醤油業界全体として、どんどん質は上がってきたと思います。うま味は高くなったし、香りもよくなった。美味しさが洗練されてきました。
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はい。
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その中で特にうま味がよく注目されますが、大切なのはバランスだと思うのです。塩辛さとうま味のバランス。
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なるほど。
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濃すぎるというか、うま味が強過ぎる醤油は、料理好きな方からは敬遠される気もします。
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刺身に美味しい濃厚な醤油が、煮物では使いづらかったり・・・
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料理が好きな方に使っていただきたいと考えています。塩辛さとうま味のバランス。そこに注意しています。
こんな話をしながらも、正金醤油さんのうすくち醤油の窒素量(うま味を計る指標)は1.5%を越えていて、一般的な基準からするとかなり高い値になっています。相当に高いレベルの話をさらっとしています。
120本の木桶には国産の大豆、小麦が仕込まれています。収穫された年における品質のよい原料を選んでいるため、複数の品種産地の原料が使われており、それらの詳細情報が正金醤油のホームページで公開されています。
だしも素材から煮出す
正金醤油の人気商品のひとつが「八方だし」。そこに使われる「だし」も自社で原料から煮出しています。ちょうどこの日もだしを引き終わった昆布や鰹節が天日干しされていました。
「すごいですねぇ!」と伝えると、「いやいや、普通のことです」とさらりとした答えが返ってきます。
それでも、「まだまだです」という姿勢を貫く
これだけのつくりをしているのですから、「こだわり」という言葉を使えば、いたるところこだわりづくしなわけです。だた、藤井さんは何事につけても「まだまだです」という姿勢を譲らない。
「大手さんの技術力はすごいですよ」
「〇〇醤油さんは美味しかった。くどくなく上手にまとめてらっしゃる」
「それに比べて、うちなんかまだまだです・・・」
藤井さんの姿勢そのままのように、正金醤油の醤油はとってもやさしい。そして、「正金さんの醤油じゃないとダメ!」という熱烈なファンが多いことも頷ける。
和風料理に使っていただきたい
価格 : 450円+税
原材料 :大豆(国産)、小麦、食塩