職人醤油の蔵元
森田醤油
一生食べ続けても安全なものを
冬には豪雪地帯になる島根県奥出雲町。「子供から大人まで食べ続けて安全な醤油」を目指して、原料の大豆と小麦は国産、ダシも自社で煮だしています。ただ、それよりも、森田さんの醤油づくりへのスタンスの方に魅力的を感じてしまうのです。
奥出雲は寒いよ
この訪問をした時は1月でした。「車のチェーンは必須ですよ。ただ、雪がすごくて来れないかも・・・」と、半分冗談で半分本気のような電話でのやりとりをしていました。普段は日が沈むと0度は当たり前で、マイナス二桁の時もあるそうです。
からくり迷路のような蔵
森田醤油の蔵の中は決して広くありません。高さ2メートル超の桶がびっしり並べられ、搾った醤油を保管しておくタンクは二階にあったりと、限られたスペースを有効利用しています。桶の上に板を渡しその上に立って諸味を攪拌すると、「ぴちゃっぴちゃっ」と心地よい音が蔵の中に響き渡ります。
年間50回を超える仕込み作業
これは相当な回数です。麹をつくるための室も小型なので、一度につくれる量が限られてしまいます。そのため何度も何度も作業を繰り返して必要な量を確保しなくてはなりません。
一度の仕込みは約3日かけて行い、その間は定期的に見守り続けます。微妙な温度の変化が麹の成長に影響を与えてしまうので、いつでも気が抜けません。仕込み期間中は室のファンの音が聞こえるところに布団を持ち運んでしまうほどに、ずっと醤油と向き合い続けています。
「ちょっと待て!」と感じてしまったから
森田さんが、ぽん酢の開発をしていた時のことです。原材料の詳細を調べていくと、「かつおエキス」に鰹以外のものも含まれていることを知り、衝撃を受けたそうです。
そんな折、「息子がそのダシを飲もうとした時、ちょっと待てと止めてしまったんです」と森田さん。その瞬間にはっとしたそうで、それまでのレシピを全て捨てて改めて原料を探しはじめます。結果として、ダシは素材を取り寄せて自社で煮だすようになったそうです。
「いや、特にまぁ、普通ですよ」
諸味の攪拌を櫂棒を使って手作業で行うことに対しては、「昔、空気での攪拌を試みたんですけどね。天井まで諸味がとびちってしまって、やっぱりこっちのほうがいいなって」と、あっけらかんと答えます。
仕込みに使う塩水の量も10水と一般的な平均より少ないことに対しては、「まぁ、収量は少なくなりますが、おいしくなると思うんですよ」と、儲けのみを考えた商売とは真逆のスタンスに、自慢するような気配が一切ありません。
「まぁ、お遊びですよ」というスタンス
そして、「まぁ、どれもこれもお遊びなんですけどねぇ、これ、黒大豆で仕込みをしてみたんです。ちょっと味みてくださいよ」と、試作品をすすめてくれました。なんともいえないのです。この時の表情が。とても楽しそうで。
浩平さんが戻ってきた
息子の浩平さんが2015年1月に戻ってきました。「元々は無添加の加工品などの仕事に就きたかったのです。だから醤油屋を継ぐことはあまりイメージしていませんでした。ところが、学生の時に家の手伝いに駆り出され、展示会のブースで店番をすることになりました。改めて自社の商品を勉強して来場者に説明しているうちに、携わりたかった無添加の食材がこんな身近にあることに気づいたんです」と浩平さん。
そんな浩平さんに森田さんはこう話をしていたそうです。「醤油屋の息子だからという理由なら勤め人になったほうがいい。うちで働くと3倍働いてやっと給料が勤め人と同じ。でもね、楽しさは3倍以上だよ」と。
自分の息子のために造ったぽん酢
価格 : 500円+税
原材料 : 醤油(大豆[遺伝子組換えでない]、小麦を含む)、だいだい果汁、すだち果汁、ゆず果汁、醸造酢、かつお削り節、昆布、みりん、粗糖
木桶で三年間熟成させた天然醸造
価格 : 600円+税
原材料 : 大豆、小麦、食塩
常温で保管ができる生の醤油
価格 : 500円+税
原材料 : 大豆(遺伝子組み換えでない)、小麦、食塩