職人醤油の蔵元

片上醤油

片上さんの醤油への愛と知識は底知れず

片上さんの個性がそのまま反映されているような醤油。それは、醤油が大好きで温厚な雰囲気がありながら、醤油を語り始めると製法から醸造学までどんどん踏み込んでいくマニアックさ。それに加えて、自他共に認める「食いしん坊」。普通とちょっと違う醤油をお探しの方におすすめしたい蔵元です。

片上裕之さん。醤油を語らせたらエンドレス。

脱脂加工大豆は「ダメじゃない!」を連発

原材料は「脱脂加工大豆」は使わずに「丸大豆」を使っています。ただ、全国に流通する醤油の8割は脱脂加工大豆が原料。希少な存在である丸大豆醤油をPRするため、脱脂加工大豆を批判するメーカーもあります。でも、片上さんは「脱脂は全然ダメじゃない!」とキッパリ。

「脱脂の立場を低くして、丸大豆を高めようとしてはあきません」と言い、脱脂加工大豆の良さをとくとくと語り出すのです。製法はこうで、流通価格はこう。醤油を仕込む時にはこんな利点がある…と、その力説する姿が、片上さんらしいなと感じるのです。

蒸したときにいい香りがするから

「国産の大豆を蒸した時、本当によい香りがするんですよ」。そして、お客様にこの豆でつくっていますと見せられるようにしたい。それが片上さんが丸大豆を使う理由。そして、近い場所でつくられたものがいいと、できるだけ奈良県産の大豆を使っているといいます。

大豆の蒸す圧力釜も丸大豆仕様。蒸し器の底にメッシュ状の穴を開けて、煮汁が捨てられるようになっています。「国産大豆は繊細です。収穫されたばかりのものか、時間がたったものかで水に浸す時間や蒸す時間が異なりますしね」。

小さくして、数を増やす

2018年、麹をつくる麹室を新調しました。今までの麹室よりはるかに小さなサイズのもの。酒蔵が使用するものを見つけ出したそうで、同じものが3基備え付けられていました。どうして3つなんですかと質問をすると、「全部に触れるようにしたかったんですよ」という答えでした。

全部の麹を直接触ることができるから

「大きな室になると、中央の部分は手を伸ばしても届かないんです。大きくて厚みもあれば温度管理にもムラができて、均一の麹に育ちにくいですしね」。小さなサイズなので、周囲を歩いて回ることができて、すっと手を伸ばせばすべての麹に直接触れることができるというわけです。

「最も神経を使うのが麹づくりですね。気温や湿度、豆の違いによって麹づくりは毎回違うので、うまく麹ができた時はホッとします。素材の良さを精一杯引き出してやれるように、いつも真剣勝負です」。

住みつく微生物も片上さんに似ている?!

蔵に住み着く微生物に委ねる

「1月~5月にかけて仕込みを行います。そして、発酵してくるのは6~7月。つまり、1月に仕込んだものは発酵までに6ヵ月あって、5月に仕込んだものは発酵まで1か月しかないんです」。

そのため、どの種類の醤油をいつ仕込むべきかのロードマップがあって、その内容も片上理論に基づいています。こういう話がとても面白いのです。

身振り手振りで解説をしてくれる片上さん。内容はマニアックだけどとても分かりやすい。
熟成期間や種類の違いによって、諸味の表情も様々。

醤油づくりにはロマンがある

桶の一本一本を眺めながらも、「これはこんな諸味で、こっちはこんな諸味。あれは一番信頼している桶。難しい醤油はこいつに任せるんですよ!」など、桶の性格までしっかり把握しています。

「醤油は約16%の塩分と20%前後のエキスが含まれていて、実に3分の1が固形分になります。長い発酵期間のうちに微生物が活躍して溶かしきってくれるんですよね。醸造に携わるものにとって、これは大変なロマンです。だから、醤油の希釈は行いません。せっかく磨きあげたものを傷つけたくないですからね」。

醤油造りは減点法

「ビギナーズラックってあるんですね。」と、最初に醤油を仕込んだ時の思い出話に。「それはもう上手にできたんです。その後に何百回と仕込みをしているけど、あの出来栄えを目指している感はあります」と片上さん。

その醤油づくりに対する考え方は「減点法」だといいます。「原料の時点で100点なんです。そこから蒸したり麹にしたり発酵熟成させたりの工程で、いかに減点を少なくするかが大切。より良い原料を用意して微生物に任せたら、人が関わる部分で減点させないように注意しています」。

気づいたら商品数が増えていた

「食いしん坊ですから・・・」と、自らがまず納得する醤油づくりを追求している片上さん。濃口・淡口・再仕込み・溜を手掛けていますが、この四種類を自社醸造している蔵は珍しいです。それぞれに仕込みや管理の方法が異なるので、同時並行でつくるには知識と忍耐力と好奇心が必要で・・・要はとても大変で面倒くさいのです。

そして、単にラインナップを広げているというよりは、それぞれの醤油が他蔵と比較して個性派に属する醤油になっているように感じます。そんな特徴に引き寄せられて、ラーメン店を開業したいという方や、こだわりの醤油を探しているという方とのコミュニケーションはいつも白熱しています。

食いしん坊を自称する片上さん作

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天然醸造醤油
奈良県大豆を使って濃い目の仕込みをしています。良い意味での重めの味。「使い終わって他の銘柄に変えたときに、あの醤油よかったねと言ってもらいたい!」と片上さんの想いがたっぷり。

価格 : 500円+税
原材料 : 大豆、小麦、食塩

うま味重視の淡口を目指しました!

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うすくち天然醸造醤油
色は淡いがうま味は少ないという淡口醤油の弱点克服に自称「食いしん坊」の片上さんが挑戦。うま味・香り・味のバランス重視で色は淡いけど味は濃口級を実現。タイ・ヒラメ・イカなどの白身魚にも。

価格 : 500円+税
原材料 : 大豆、小麦、食塩

この濃厚さはステーキにも負けない

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重ね仕込み醤油
再仕込み醤油の中でもトップレベルに濃厚。好き嫌いも分かれる程の個性派!とても濃厚で肉につりあっていくことができる醤油なので、ステーキに溶かしバターソースで。

価格 : 600円+税
原材料 : 大豆、小麦、食塩

諸味の攪拌できる限界に挑戦して

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自家用たまり醤油
一般的な溜醤油は味噌と同じように重石を使って仕込みますが、濃口醤油の製法で造っています。大豆の比率を増やして仕込水を限界まで少なく。濃口の延長として使える溜です。

価格 : 600円+税
原材料 : 大豆、小麦、食塩

焼餅や焼肉に使える上級者向け

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青大豆醤油
士別市の北海道ルーツファームの斉藤さんの青大豆を、奈良県の片上さんが木桶で仕込んだ濃口醤油。栽培が難しく収穫の全てを手作業で行う「青大豆」はとっても貴重な存在。

価格 : 600円+税
原材料 : 大豆、小麦、食塩

年末限定の砂糖醤油は三温糖が秘訣

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焼もち醤油
一年に一回だけ年末に会える片上さん渾身の砂糖醤油。上品な甘さのってなかなか出会えないもの。お餅に付けて熱が伝わってちょうどよくなるように。納豆にかけるという方も。

価格 : 600円+税
原材料 : 大豆、小麦、三温糖、天日塩
この蔵元への直接のお問い合わせ
片上醤油
〒639-2318 奈良県御所市森脇329
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