職人醤油の蔵元
井上本店
ストレートつゆを手掛けられる実力
「何がすごいの?!」と思われたかもしれません。「濃縮つゆ」は雑菌を抑えやすいですが、「ストレートつゆ」はそうはいきません。大手メーカーがクリーンルーム等を備えてつくるのが一般的で、小さな蔵元が手掛けることはとても稀。微生物と専門的に向き合える知識と醤油づくりへの信念を持つ井上本店の特徴の一つだと思います。
創意工夫の製造設備
「先代が改良するのが好きで、しょっちゅうあれこれ作っていたんです。ただ、故障してしまうと大変なんですよね!修理をするのは我々ですから・・・」と吉川社長。ただ、その口調は嬉しそうで誇らしげ。
先代がマイナスからスタートして今がある
先代は大変な苦労の中で醤油づくりをしてきたそうです。先々代が大きな借金を残してしまい、ゼロというよりマイナスからのスタート。そもそも醤油づくりは、原料購入から商品になるまで時間がかかります。時代的な背景もあったのですが、原料からではなく半製品の醤油を買ってきて販売する日々が続いたそうです。
それでも醤油づくりがしたくてしたくて・・・自分のこだわりの醤油造りをするために、お酒やジュースの販売などありとあらゆることをされたそうで、念願かなって自分で原料を買えた時の喜びは一潮だったそうです。おまけに研究熱心で知識も豊富。製造設備も「もっとこうした方がいい!」がどんどん積み重なっていったそうです。
守る部分と変える部分
先代の井上平祐さんが残された下記の文章。これが井上本店が守る部分だと吉川社長は言います。
「自分たちが食べて美味しいと感じるものを造ること。そして、国産の原料を使うこと。」この考えを基に日々改良を積み重ねています。「先代は亡くなる間際まで醤油や機械のことを心配していました。一人でいろいろ試行錯誤して種をまいておいてくれたのです。その一つ一つのことを、昔からこうだったからとそのまま踏襲するのではなくて、科学の目を持って見直し検証しているのが今の段階なんです。」
醤油の油は燃料として
圧搾時にでる油は産業廃棄物として処理されます。この油、全くもって美味しくないのです。原料となる大豆には油分があり、グリセリンなどに分解されて醤油の一部になりますが、圧搾時に分離された油は酸化しているしドロドロで扱いも大変・・・と醤油屋泣かせな存在なのです。
普通は捨てられるこの油、ここでは小麦を炒る機械の燃料として使われています。ただ、油は油でも塩分を含んでいるのでそのままでは使えないはず。「油に水を混ぜるんですね。そうすると塩分が水に溶け出すので、これを繰り返して最後に加熱をして水分を飛ばすのです。」
「ストレートつゆ」つくれます。
大手メーカーなら可能で、小規模メーカーでは難しいことはたくさんありますが、ストレートつゆもその一つだと思います。ストレートは塩分が低いので雑菌による汚染を受けやすい。目に見えない雑菌が混入しないように細心の注意と相応の設備、そして、微生物についての深い知識が必要となります。
分析も自分たちでこなす
「自分たちが美味しいと感じるものをつくる!」という考えから、充填設備や分析室も完備して、普通は外部に依頼する解析も自前で行っています。ここを取り仕切るのは元大手酒造メーカーの研究者だった女将さん。
ある時、どうしても特定できない菌があって、「結局、一夏を研究施設で過ごしたんです。考えられる全ての工程の検証を行なってようやく原因を突き止められましたけど、あの夏は本当に大変でした・・・。でも、その経験が醤油づくりにも活きているので、結果的には良かったのかしら?!」
全部見せちゃいます!
先代は関西の醤油の蔵人の中ではちょっとした有名人。研究熱心で知識も豊富だったことに加えて面倒見の良い方だったそうで、他の蔵人にも進んで醤油造りを教えていたそうです。だから、井上さんに教えを受けた蔵人はけっこう多いそうです。
そのスタンスは引き継がれていて、蔵見学などもオープン。「一般の方はもちろん、同業者でも同じスタンスです。教科書論は実際に見たとしてもフィードバックできるかは自分次第ですからね。出し惜しみせずに全部見せちゃいます!」
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