職人醤油の蔵元
天野醤油
おいしいものを低価格で
蔵の背景には悠然と構える富士山。仕込みの時期には富士山から沸き出る名水を求めてトラックを走らせます。早い時期から再仕込み醤油を手掛けるなど美味しい醤油を追求しつつ価格はお手軽にを目指す地域に根差した醤油づくりをしています。
天野醤油は家族経営
静岡県御殿場市。静岡県の東部に位置し、蔵の背後には富士山が悠然とその姿を現します。この地で醤油造りをする天野醤油は、静岡県で原料から仕込みを手掛けている数少ない蔵として醤油造りを続けています。
山口県が発祥とされている「再仕込み醤油」を、東日本で早期から手がけ始め、第27回全国醤油品評会にて農林水産大臣賞を受賞しています。
地域の子供たちに届けられる誇り
まじめな醸造方法及び原料にこだわり、水などで薄めず、絞ったままの醤油(生揚げ)100%でつくられる醤油は、静岡県東部(御殿場市・沼津市・三島市・裾野市)の公立保育所、小学校、中学校で使用されています。
「子供たちの口に入るものなので、細心の注意をしなくてはいけないという責任感とともに、地域の子供たちに届けられるってことに誇りを感じているんです!」と天野栄太郎社長。
おいしいものを低価格で
天野醤油は現当主の先々代が15年もの修行期間を経て創業しました。「おいしいものを低価格で」という教えは先代にも引き継がれましたが、世間は大量生産による低価格商品全盛の時代。周囲からのプレッシャーや量産化へとシフトする同業者たちを横目に、自分たちの醤油造りを貫き、休みの日も店頭販売へと各地に足を運んでいたそうです。
「今の時代になって私たちの醤油造りが、改めて受け入れられるようになってきたと実感しています。」
食べ続けて安全な醤油
蔵にお伺いすると、3人の職人たちが醤油の仕込みをしている真っ最中。見事な連携プレーに圧倒されます。「機械の導入によって、より安定して良いものができるようになったんです。」と天野工場長。
「蒸した大豆は、炒った小麦と混ぜ合わせるのですが、蒸した大豆は当然高温になっているので、昔は大豆が冷めるまで待つ必要がありました。ところが、機械の導入でこの待つ時間を短縮することができる。大豆の過変性を防ぐことができ、大豆の旨みを醤油造りにより活かすことができるようになりました。」
ずっと付きっきりで一時間
大豆が蒸しあがる一時間の間、工場長はずっと蒸される大豆たちに付きっきりです。 圧力をかけて蒸すことができる釜を使用するのですが、「大豆の状態によってや気温等の状態によっても微妙に違ってくるんですよ。」と目線は温度計と圧力計をじっと見つめます。「一見、仕事しないでぼっと立っているだけに見えるでしょ?!」と笑いながら、微調整のためにバルブに手を伸ばします。
時間をかけて熟成
このように職人の技と先進の技術が融合した蔵の中で、濃口醤油の「本丸亭」で1年6ヶ月、再仕込み醤油の「甘露しょうゆ」は、仕込みの元になる生醤油が10ヶ月、仕込み直してさらに1年ほど熟成させて完成を迎えます。
富士山麓に湧く銀名水が仕込水
天野醤油でつくられる醤油は、水にもこだわりがあります。富士山麓に湧く銀名水が仕込水として使われているのです。富士山の雪解け水が何十年もの年月をかけて湧き出る名水で、年間通して14~15度という一定の水温を保っています。夏場は冷たく感じ、冬場では湯気がたつほどで、とっても綺麗に透き通っています。
実際に湧き出ているところを見て印象的だったのが、水の透明感と水中に苔が一切生えていないことです。水面ぎりぎりの部分までは苔で覆われているのですが、水中は驚くほど綺麗で底まではっきり見通せる程。この水を使って育てられた山葵(わさび)も絶品のようで、下流には山葵棚が広がっています。
水くみが大切な一工程
天野醤油で一週間の仕込みに必要な水が約6トン。その量を三回にわけて汲むために天野醤油のトラックが走ります。持ち運び式の電動ポンプをつかっての作業は、大変な手間ですが、水が変わると醤油の出来も確かに変わるそうで、この水くみが醤油づくりの大切な一つの工程になっているのです。
濃厚でありながらあっさりすっきり
価格 : 500円+税
原材料 :小麦(国産)、脱脂加工大豆、食塩、大豆、米/アルコール