職人醤油の蔵元
クルメキッコー
200本の木桶を有する福岡県の醤油蔵
福岡県久留米市の本社から車で3分ほど、筑後川の堤防から少しくだったところに仕込み蔵があります。見学を迎え入れてくれたのは取締役の深町太一さんと製造部の田村史和さん。がっちりとした体格が印象的なお二人です。
蔵の前に用意されていたのは原材料などの見本。大豆や小麦などが並ぶことは多いのですが、ここでは乳酸菌や酵母菌まで用意されています。醤油づくりのすべての素材がきちっと並べられているのです。
*乳酸菌、酵母菌については蔵付きの(古くから住み着いている)もので、人工培養したものの添加はしていません。
整然と並ぶ木桶が200本
大豆を蒸すNK缶や麹室は洗浄作業の真っただ中。その様子を見ながら、スリッパに履き替えて階段を上ると、並んだ木桶が一面に広がっていました。高い位置にある窓から外日がやさしい光を注いでいます。ほぼ同じサイズの桶が規則正しく並び、それぞれに異なる諸味の表情をみせてくれている光景はただただ圧巻です。
クルメキッコーの特徴は桶の数だけにあらず
200本の桶の保有数は全国的にみてもトップクラス。この数だけでもクルメキッコーの大きな特徴になると思うのですが、話を伺うほどに、この蔵の特徴は別のところにあるように感じてしまいました。
蔵に入ったときに気づいたこと。それは、いやな匂いがしないことでした。これは不要な雑菌が繁殖していない証。さらに、個々の桶を見てみると頻繁に手入れをされている様子がうかがえます。
桶仕込みの醤油が中心にある
木桶の管理について伺うと、すべてスタッフの方たちが手作業で管理をされているそうです。「これだけの量ですよ?さすがに櫂棒ですべてを混ぜているなんて・・・」と伝えると、「男性社員はみな野球部なんですよ」という答え。ん?野球部?
クルメキッコーの男性社員は、社長の方針で野球経験者で構成されているそうです。「スポーツしてきた人は基本的な礼儀やチームワーク、マナーができているので教える必要がないですから」と笑いながら答える深町さん。
野球の試合と同じように醤油づくりが進む
一般的な醤油蔵では寒い時期に仕込みをして、夏場はしないことがあります。ただ、クルメキッコーではずっと仕込みをしています。毎日、毎週、毎月、規則正しいリズムが繰り返されています。
まるで野球の試合のように淡々と同じ作業が行われていきます。そのため、空になっている桶はいつも数本ほど。1週間を待たずに新たに仕込まれるそうです。
品質も一定になる
「夏と冬で発酵の仕方も違うんじゃないですか?」と質問をすると、「確かに光の当たりやすいところは、色が付きやすなどの違いはありますが、味わいは比較的均一なんです。不思議ですよね」と田村さん。
同じペースで搾るので、空いた桶にはすぐに諸味が入ります。空になっている桶が最小限。これが蔵にいやな匂いが皆無だった理由なのだと思います。そして、蔵全体に醤油づくりに適応した優良な微生物がしっかりと住み着いているはずです。
なんともいえない一体感
現在、取締役の深町太一さんが、他の醤油メーカーでの修業を経て戻ってきたのは2013年だったそうです。「帰ってきてよかったと思っています。なんともいえない一体感があるんですよ」。横で話を聞いている田村さんが微笑んでいます。
月に4度ほどお弁当を取り寄せて、皆で食べているそうです。まさに同じ釜の飯。そして、自然と野球の話題になるそうで、野球未経験のパートさんたちも次第に野球に染まっていくのだとか。
生協と歩んできた歴史
九州は甘い醤油が好まれる地域。大きく2つのタイプの醤油をつくっています。地元のスーパーに並ぶ醤油は甘いタイプのものが好まれ、一方、甘くないタイプの醤油は生協向けなどで人気があるそうです。
昔はコンクリートやプラスチック製のタンクもありましたが、「全部を桶で仕込んでみれば?」という声を受け、現社長が40年位前に近隣の酒蔵などから譲り受けて増えてきた桶。原材料の大豆も地元産です。桶仕込みが特別ではなくて、桶であることが普通。当たり前の日常として桶と向き合っている蔵元です。
九州醤油の甘さのある木桶仕込み
価格 : 450円+税
原材料 : 大豆(国産)、小麦(国産)、食塩、砂糖、醗酵調味料