職人醤油の蔵元
マルヰ醤油
数値で管理をして五感で醸す
木桶が並ぶ蔵の中は、真っ白な壁と天井が印象的。諸味の管理は攪棒を使い、飛び散った諸味はその度に拭きあげています。細かく数値分析の記録を残しながら五感で醸すことを大切にしている蔵元で、平成30年の全国醤油品評会で最高賞である農林水産大臣賞を受賞しました。
長野県北部に位置する中野市。
長野県中野市は農業が盛んな地域。ぶどうやりんご、しめじなどの生産が有名で、中でもえのき茸の生産量は日本一を誇ります。
高速のインターをおりて国道292号線を南下します。左右には農地が広がり、その光景を眺めながら車を走らせると、長野電鉄の信州中野駅に近づく頃にマルヰ醤油に到着しました。
昭和22年からの後発組です
「うちは昭和22年からの後発組なんです。長野県は味噌の生産が盛んですが、初代が人と同じことをするのが嫌いな性格で、周りが味噌をやっているなら、自分は醤油だと。そのようなはじまりだったようです。明治2年とかかれた木桶がありますが、醤油を仕込んでいるという話から集まってきたものだと思います」と、社長の民野博之さん。
真っ白の壁と天井が印象的
木桶が並ぶ蔵の中を案内いただきました。ぱっと目に入ってきたのは真っ白の壁と天井です。きれいに管理をしていると言葉にするのは簡単ですが、通常であれば醤油の諸味を攪拌したときの飛び跳ねが壁に付着してしまいます。それが全く見当たりません。
そして、天井は高さ3メートル以上はありそうですが、ここも全面にわたって真っ白。「月に一回、掃除の日があるんですよ。この日は掃除だけ。天井も長い箒でこうやってね」と、身振り手振りで解説してくれたのは技術顧問で会長の民野泰之さん。
この作業が当たり前になっている
桶の内側も毎回拭きあげているそうです。スタッフの方にその様子を写真に撮っていいですかとたずねると、「えっ?!どうしてですか?」と不思議そうな表情を浮かべています。
特別なことではなくて日常なのだなと感じながら話を伺うと、「かき混ぜるより拭きあげ作業の方が時間がかかるんですよ」と。「ずっと言い続けて、ようやく当たり前になってくれました」と、泰之さんがこっそり教えてくれました。
50年分の記録が残っている
その会長にスタッフの方からメモ書きが手渡されます。「15時に醤油の塩分測定お願いします」と記されているのですが、塩分測定も窒素分析も社内で行っています。
製品を出荷するときはもちろん、仕込みの段階から各工程毎に数字で管理。50年分の記録が残っているそうです。「スタッフも数字がないと不安になるくらいですからね。うちのDNAになっていると思いますよ」と泰之さん。
混合醸造への想い
「このあたりで蕎麦を食べる時、つゆにどっぷりつけるんですよ。だから、醤油も甘くてからいものもが好まれます」と泰之さん。マルヰ醤油では丸大豆を原料にした本醸造醤油もつくっていますが、地元の蕎麦屋が選ぶのはアミノ酸液を諸味の段階で加える混合醸造方式の醤油といいます。
「混合醸造は自分らしさがだせる醤油だと思っているんです。全国的には混合醸造を手掛ける醤油メーカーは減少しているし、設備の維持も大変です。でも、郷土食を支える醤油をつくり続けたいですし、諸味は手放したくないですね」。
社内のコミュニケーションも活発に
部門ごとに朝礼と昼礼が定例化していて、頻繁に社長や顧問が呼び止められて談笑のような打ち合わせをしています。「目で見て、耳で聴いて、鼻で香りを確認して、舌で味わって、手で触る。五感で醸すことを大切にしています」と話すのは社長の民野博之さん。「きちんと手を加えないと麹は素直ですよ」と続けます。
醤油づくりや掃除、社内コミュニケーション等どんなことでも正面からありのままに向き合う。目指すのは幸せの醸成。その理念を体現するような社内の雰囲気がありました。
しょっぱい醤油が苦手な方におすすめ
価格:400円+税
原材料 : 脱脂加工大豆(遺伝子組替えでない)、小麦、食塩、水あめ/アルコール、調味料(アミノ酸等)、カラメル色素、甘味料(甘草)