職人醤油の蔵元
下津醤油
指摘と改善の積み重ねで今がある
「平成10年に家業に戻ってきて、現場の汚さに唖然としました。取引先の監査でもボロクソに言われて…」と話すのは下津家16代目の下津浩嗣さん。ただ、その時から始めたISO取得などの取り組みが実を結び、平成30年の全国醤油品評会で最高賞である農林水産大臣賞を受賞しています。
下津醤油の創業は安政3年(1856年)
「12代目の利兵衛さんが株式会社にしたので、社長としては8代目。下津家としては16代目ですかね」と下津浩嗣さん。2018年で101期目。大正時代からの決算書が残っているそうで、「この時にこんな挑戦をして、こんな失敗をしてと、記録から歴史を読むことができるのはありがたいことですよね」と話します。
指摘と改善の積み重ねで今がある
「下津家は3の倍数で養子なんです。そこが改革をしてきたんですね。私の父も婿養子です。業務用にシフトをして、地元の水産加工メーカー向け調味液の提案で売り上げを倍増させました」。
下津さん自身も継ぐことを自然と意識をしていたそうです。「ただ、平成10年に戻ってきて感じたのは現場の汚さでした。取引先の監査でもボロクソに言われました」。
でも、その時からの取り組みが今の下津醤油をつくっているといいます。
ISOの取得の取り組みがスタート
その時に挑んだのがISOの取得。ISO 9001は国際標準化機構 (ISO) による品質マネジメントシステムで、現場を改善して外部からの審査を受ける必要があります。
同時に社内向けに改善提案活動をスタートし、現場の視点から改善すべきことを月一回の会議で共有。そして、やると決めたことができているかのチェック。
「その繰り返しで今があります。外からの指摘と内からの改善の積み重ね。取引先に育てられたようなものです」と、下津さん。
香ばしい香りが漂う麹づくり
「ベタっとした麹は嫌いでね」と醤油づくり一筋39年の岡田和弘工場長。清掃が行き届いている麹室からは、ふわっと香ばしい栗のような香りが漂い、運び出される麹は見た目にもきれいです。
岡田さんの麹に対する思い入れは深いものがあり、原料が丸大豆と脱脂加工大豆とどう違いますか?と質問しても、「丸大豆は空気が通りやすいから麹にするときの管理がしやすいですよね。だけど窒素が上がりにくいから仕込み水の量を少なくして対応しています。一方、脱脂加工大豆はうま味が高いものができるけど、麹づくりの温度管理は大変ですね…」と、麹の話に行き着きます。
細かく対応できる提案の蓄積
周辺の水産加工メーカーは、もずくやカズノコ、みりん干しなどを手掛けていて、それぞれに応じた調整をして出荷をしているそうです。各社のニーズに対応するためにオリジナルレシピ。その蓄積は日々増え続けているそうで、地元の食文化を支える一役を担っています。
「なつかしい」の一言に衝撃
数年前、地元のお祭りに出店した時のこと。醤油を試食した方が、「なつかしい味だね」という会話に衝撃を受けたそうです。今現在の味ではなくて、なつかしい味になってしまっている。地元に忘れられつつあるという現実に、地元回帰の取り組みをスタートさせたそうです。
地元の原料をつかった醤油づくりに挑むも、当時の小麦ではうま味が不十分で難航。ただ、醤油組合と地元農家が協力してタンパク質の含有量の高い品種を開発してくれたこともあり、三重県産の大豆と小麦の醤油づくりを実現。
変わり続ける下津醤油
そして、工場を舞台にした年2回の感謝祭を開催すると、今では多くの人で賑わうといいます。伝統を引き継ぎながら目の前のことに対応し続けている下津醤油。これからも変化を続けていくのだと思います。
料理に使いやすい長年変わらない味
価格:400円+税
原材料 : 脱脂加工大豆、小麦、食塩、果糖ぶどう糖液糖、アルコール、調味料(アミノ酸等)