職人醤油の蔵元
カネイワ醤油
昔ながらの製法に魂をこめる
「その土地の香りってあると思うんだ・・・」
そんな言葉から会話はスタートしました。「昔、おばあが醤油を混ぜて来い!っていうもんで、混ぜていたときの醤油の香り。」その香りに触れると昔が偲ばれて、そのときの情景が頭をよぎる。香りがもつイメージの力というか、日本人が忘れてはいけないことだ思うんだよ。と語るのは岩本行弘専務。
和歌山県の醤油はみりんが鍵
醤油の歴史を辿っていくと、和歌山の「金山時味噌」に必ず出会うはずです。13世紀頃に中国から伝わった味噌の製法が紀州・湯浅周辺に広まったとされるもので、この金山寺味噌を作る際の味噌の溜(たまり)から、液体の醤油作りが始まったというもの。
もちろん和歌山県にも昔ながらの造りをしている蔵が多く残っていて、カネイワ醤油も原料の仕込みから熟成・圧搾までを全て自社で行う蔵の一つです。この地域の特徴としては、少量の「みりん」を加える蔵が多いように感じています。みりんを加えてまろやかになった醤油がこの地域の味ってわけです。
魂を込めること
岩本さんと話をしていて頻繁に聞こえてくる言葉は、「本物」「情熱」「魂」。カネイワ醤油に戻ってくる前は看護士として病院勤務をし、地元ラジオにレギュラー番組を持っている・・・という点ではちょっと変わった職人さんです!
その岩本さんがいう、「本物の醤油を造りたい」。
「本物とは何ですか?」と伺うと、「魂がこもっていること」。
「料理人だってそうだと思う。一人前になるまでの下積みがあって鍛えられる。一年目は包丁など握らせてもらえないのが当然。二年目にようやく調理場へ・・・その積み重ねがあって初めて、形の違う魚を切ってもきっちり同じ大きさに揃えたりすることが出来る・・・。」
醤油造りも同じ。
機械を使えば均一な品質のものができるけど、毎年変わる原料の出来栄えや自然環境の中で醤油を造り続けること。麹づくりの3日間は昼夜を問わずに見守り続ける。蔵人が温度計を睨み、自分の手を入れて温度を確かめ、目で麹の状態を確認する。手にとって香りを確かめ、湿度を感じ取る・・・蔵人の五感が熟練センサーになるわけです。
蔵人の技術と情熱で「良い麹」を作り上げたら、次は自然の力にバトンタッチ。 カネイワ醤油本店の木桶や建物の中には、たくさんの酵母や微生物が住み着いていて、百年近くもの間、世代交代を繰り返しながら独自の生態系をつくり上げてきているのです。
このようにして造られた醤油は造り手の愛情がたっぷり詰まった、「魂のこもった醤油」。「これちょっと舐めてみな!めっちゃ美味いから!」と岩本さんはニコリと笑う。
戦艦大和 vs 手漕ぎボート
醤油の業界は大手メーカーと、比較的小さな蔵で造っている醤油との二極化が進んでいます。
「今の世の中、単に安いだけのものは売れていないと思う。」と岩本さん。「大手メーカーは相当な努力をしているはず。商品開発にしても研究開発にしてもそう。醤油業界の大手メーカーは、わしらにとって戦艦大和のようなもの、わしらは、まぁ、手漕ぎボートだな・・・だけど、戦艦大和と手漕ぎボートの間にお宝が眠っているとも思っている!」
「それは何なのですか?」と質問すると、こんな話が続きます。
本物を求めてくれるお客様に出会いたい・・・それが望むことかな?!価格だけで比べたら大手メーカーの醤油に勝てるはずはない。だけど、自分たちが魂をたっぷり込めて、カネイワに住み着く微生物たちがつくり上げてくれた醤油たち。
「高いけど、カネイワの醤油がいい!」そう言ってくださるお客様に1人でも多く出会いたい。それは1000人に1人かもしれない。だけど、それでよいと思っている。
欲も出さず、手も抜かず、シンプルに。お客様の顔、地域、ふるさとをしのぶような、そんな醤油を造っていきたいと思っているのよ・・・こんな考えをしている造り手がつくった醤油、それがカネイワ醤油なのです。
みりん加えてしょっぱさを抑える
価格 : 450円+税
原材料 : 丸大豆(国産)、小麦(国産)、食塩、みりん
搾って火入れ濾過後そのまま詰め
価格 : 500円+税
原材料 : 丸大豆(国産)、小麦(国産)、食塩