職人醤油の蔵元

笛木醤油

ロングセラーを支える挑戦と愛社精神

明るくて楽しい食卓をコンセプトに地元に根差した醤油づくり。早い時期から生産をはじめた減塩醤油は30年を越えるロングセラーになっていて、愛社精神に溢れたスタッフと挑戦をし続ける社風が1789年創業の老舗を支えている。

田園風景に佇む蔵

都心から車で1時間。圏央道の川島ICでおりると田園風景が広がっています。そこからわずか数分。突如現れる趣のある蔵が、笛木醤油の工場併設の直売店です。

その裏手には越辺川が流れて、過去には原料や商品としての醤油を船で運ぶために活躍していたそうです。

創業は1789年(寛政元年)。看板商品は木桶で二夏かけて仕込む金笛醤油。これは東京オリンピックでの金メダルにあやかったもので、一般家庭向けの醤油が「金笛」で、業務用が「銀笛」だったとか。

海外留学から家業へ

出迎えてくれた笛木正司さんは、2006年に家業にもどってきたそうです。第一印象でインパクトがあるのが、そのがっちりとした体形。なにかしらの競技のアスリートと見間違えるほどで、思わず聞いてしまいました・・・

  • 何かスポーツされていたのですか?
  • 昔はサッカーに明け暮れていました。
  • やはり!!!
    では、どのような経緯で家業に戻ってこられたのですか?
  • 実はサッカーがきっかけになっていまして・・・高校生の時にブラジルにいく機会があったのですが、現地の貧しい生活を目の当たりにして衝撃を受けたというか・・・
  • サッカーの練習と共に、日本とは違う環境を感じたのですね。
  • それがきっかけで海外に興味を持つようになりまして、ジョージワシントン大学に留学することにしました。
  • 海外での大学生活だったのですね。
  • すると、留学先で自社の醤油が売られていたんです。
  • え~!すごいですね。それ。
  • 本当にたまたまだったのですが、友人が指をさしながら、「これはお前のところのか?!」と聞いてくるんです。
  • 嬉しいシチュエーションですね
  • その友人に、「これは誇りだろ?お前のミッションだぞ。これは。」そう言われた時、ハッとしたのを鮮明に覚えています。
大豆を蒸すための圧力釜(NK缶)

戻ってきて感じたのはスタッフの愛社精神

「最初は現場に入りました。醤油の麹をつくる工程で、スタッフが自分の子供を扱うように丁寧に原材料に接していたんです。うちは決して規模が大きいわけでも、お金が潤沢にあるわけではないですが、スタッフが会社と醤油を愛してくれている姿を感じて・・・嬉しかったんです。」

一方で、新しいことに挑戦する風土が代々受け継がれているようです。早い時代に「減塩醤油」の製造にも着手し、開発に挑んだ「金笛胡麻ドレッシング」、「金笛春夏秋冬のだしの素」もロングセラーになっています。

「醤油をベースにスイーツや加工品、ゼリーにも挑戦したことがあります。機械化の逆を進みながら、自分たちでできることをしていこうというのが、私たちにとっての伝統を引き継ぐということだと思います」と笛木さん。

分析することが習慣になっている

自社で分析装置を備えていて、原料の時点から数値を把握して仕込み手順に反映をさせます。また、諸味の段階でも定期的にデータを蓄積して搾るタイミングを判断するそうです。

工場見学も可能です。大豆、小麦、塩の実物使って説明を。
木桶が並ぶ蔵では、諸味の中で微生物がどのような働きをしてくれているかを解説。
諸味から醤油を搾る圧搾場。

汚れやすい設備もピカピカ

圧搾の工程は諸味が飛び散ったりと、とかく汚れやすい空間で、鉄製の機械も醤油の塩分ですぐに錆びてしまいます。ところが、ここまできれいな状態が保たれています。いつ誰に見られても大丈夫な現場を目指して、日々のメンテナンスと掃除が徹底されているからこその姿です。

昭和55年からのロングセラー

今でこそ当たり前に目にする減塩醤油ですが、早い時期から取り組みをスタートしていたそうです。木桶で熟成させた醤油をベースに約50%の食塩分をカットしたもので、煮物や料理に使うとそのよさが実感できると、30年以上のロングセラーになっています。

火入れをするためのプレートヒーターという装置。大型タイプに驚いてしまいました。

減塩にすることで雑菌に汚染されるリスクも高まってしまいます。そこで、火入れは120度と通常より高温でしっかりと行います。

「もともとは漬物メーカーさんからの要望だったのです」と笛木さんが解説をしてくれました。できるかぎり菌数の少ない醤油が欲しいという要望に応えるために設備と管理方法を見直してきたそうで、その成果が減塩醤油にも活用されているというわけです。

12代目の笛木正司さん(左)と、品質管理室室長の有田竜也さん(右)

地域に貢献できるように

「自分が18歳の時に急死した父がこんなことを口にしていました。『自分のポテンシャルは、自分のためではなく地域や他人のために使え』と。当時はしっかり聞いていませんでしたが、最近になって親父の言いたかったことが分かるような気がしています」。

2013年から「創業祭」と称して地元の方をお招きして、楽しみながら醤油に親しんでもらえるようなお祭りをスタートさせたそうです。地域の中の醤油屋という立ち位置を大切に、創業230年に向けてさらなる挑戦を予感させてくれる、そんな蔵元です。

火入れをしていない生の再仕込み

30
金笛 再仕込生醤油
濃厚な再仕込醤油であって火入れをしていない生タイプ。かけて使うのはもちろん、のばしてもうま味がしっかり。煮物や炒め物の隠し味としても。

価格 : 500円+税
原材料 : 大豆(国産)、小麦、食塩

木桶で熟成させた減塩醤油

60
金笛 減塩醤油
昭和55年発売のロングセラーな減塩醤油。木桶で熟成させたうま味たっぷりの醤油をベースに食塩だけを50%カット。

価格 : 450円+税
原材料 : 大豆(国産、カナダ産)、小麦、食塩/アルコール
この蔵元への直接のお問い合わせ
笛木醤油
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