木桶職人復活プロジェクト

残念杉とは言わせない!

「残念杉」って、ご存じですか?

木桶をつくるときの端材で、木桶になれなかった材のことです。そもそも新桶はここ数十年作られていなかったので、「残念杉」という言葉も最近生まれました。

杉の木材の端、切り落とされた部分なのでそれぞれ角度の異なる三角形に近い形です。特に使われる用途がなく捨てられていた残念杉、でも、ちょっともったいないよね…と、ある職人が立ち上がりました。

新桶をつくる時の底の板

残念杉は新桶をつくるときの端材です。上の写真は底板をつくるときの様子ですが、分厚い杉の板材が使われています。完成時には3トンを超える容量を支える底。使われるのは特に上質な木材です。

板を並べて正方形に近い形にして、そこから円形に切り出します。円の内側の部分が底板となり100年~150年の役割を担いますが、白いチョークの外側は、残念ながら桶になることができません。ここが残念杉です。

チョークの内側は桶になりますが、外側は桶になることはできません…。

木桶になれなかった残念杉

新桶をつくっている香川県小豆島には「残念石」とよばれる石があります。400年前、大阪城の石垣をつくるために、この地からも石が切り出されて運ばれたそうです。ただ、何かしらの理由で置き去りにされたものがいくつもあって、それが「残念石」です。

だから、木桶をつくっているときに、木桶になれなかった杉材は「残念杉」とよばれていました。

岡 木工所の岡 主弘さん。木桶づくりの職人でもあります。

残念杉とは言わせない!

建具職人でもある岡 主弘さん。本業は建具職人で、細かいくて精密な加工が得意です。桶の底板をつくるときも大きな丸ノコやノコギリ、鉋を駆使して曲線の加工を見事に仕上げています。

「ものづくりが好きなんです。木材をつかって何ができるかあれこれ考えるのも好き。売るのは下手なんですけどね。笑」と、いつも木に囲まれて仕事をしています。

吉野杉に無駄はなかった

「吉野杉の製材をしている現場に行ったときなんですけどね、端材は割りばしに加工しているんですよ。『捨てるところがないように加工する』、そう話す吉野の職人が印象的で、じゃあ、残念杉も捨てちゃだめだよねって、そう思ったんです!!」。

岡 木工所では木製建具、家具の製造と共にこのような組子細工もできます。

残念杉が生まれ変わっています

はじまったばかりの取り組みですが、展示用の小さな桶やペン立て、名刺入れなど、残念杉が新たな姿に変わっていきます。新桶をつくる時に少しだけ生まれる残念杉。残念杉プロダクトもバリエーションが増えていくかもしれません。