木桶職人復活プロジェクト

木桶づくり 2013年

まずは板を削る。ひたすら削る。

はじめての自分たちでの桶づくり

2013年9月17日~20日。小豆島のヤマロク醤油にて新桶づくりをしました。2012年に大阪堺市の藤井製桶所での修行を経て、はじめて自分たちだけで行う作業です。4日間で20石桶を1本組上げる予定だったのですが、スタートしてすぐにトラブルに見舞われ、最後までずっとそのような調子でした。

板と板を竹釘でつなげて、
立てていくと桶の形になります。

桶を立てるところから

初日の作業はここから。あらかじめ削っておいた板を竹の釘を使って組んでいきます。上と下を合わせてトントントン・・・。竹クギが折れないか心配しながら作業していくと、ゆらゆら桶が動きまわります。

「あぁ!こっち外れた!そっち押さえて!」「またダメだ!ここが外れた・・・」イタチごっこを繰り返しながら、少しづつ形になってきました。

仮締めをする鉄のワイヤー。

丸くするところから

組んだ桶を一時的に締めるための鉄製のワイヤー。修行時はきれいな円形に曲がっていたものをボルトでしめていました。ただ、用意していたものは直線のワイヤー。これを丸くするだけで一苦労でした。

力づくで曲げてみたり、石の柱に押し当ててみたり。それなりの形になってきても、ぐにゃぐにゃ状態・・・。既に数時間が経過していました。

箍を編むのも手順を確認しながら。
もう少しというところで、パキッと折れることも。

4人がかりで箍を編むこと20本以上

竹で箍(たが)を編みます。師匠は一人ですいすい編んでいましたが、今回は四人がかり。13メートルの長い竹と格闘していました。

とにかく長い竹です。しならせる方向を間違うとバキッとなり、最初からやり直しになってしまいます。こっちの方向に曲げればいいと分かっていても、竹が言うことを聞いてくれない!そんなもどかしさを抱えながらの作業でした。

桶に入れる7本の箍は全て大きさが違います。ちょうどよい大きさを見極めるのが難しく、小さすぎても大きすぎてもだめ。結局、20回以上のやり直しをしていました。

底板のために寸法の計測。桶の中は空気の流れがなくて暑い。みんな汗だく。
何度も何度も話し合い。傍から見ていると喧嘩しているように白熱。
底板を叩くための胴突も制作。
作業予定が遅れに遅れ、暗くなっても作業が続く・・・
この時から落書きをするのが定番に。関わったメンバー全員が未来への伝言を。
桶を倒すと巨大な拡張器に。声がやたら反響します。
あっという間に時間が過ぎて、お昼のお弁当タイム。
底板づくりも初めての取り組み。
三人がかりで支えてミリ単位以下の精度で仕上げていく。
削り過ぎに注意しながらピタリと想定する大きさに。とにかく漏れないように慎重に。
何度も頭を抱えました。
フォークリフトと人力で底板を桶の中に。ロープで吊って下ろしていきます。
ゆらゆら揺れる底板が・・あぁ、腕がイタい・・・。
底を確認して、OKの合図がでると拍手と歓声。
今日の日付。記念すべき新桶第一号。左側には跡継ぎの康蔵くんの手形も。

未来にむけた第一歩

慣れない力仕事に終日全身筋肉痛。夜も数時間毎に目が覚めてしまう程にフラフラでした。しかも、トラブル続きで「完成しないんじゃないか?」と何度思ったことか・・・ただ、不思議なもので全く苦には感じませんでした。

時間が経つ毎にチームになっていく感覚。2日目の終わりに、このままでは絶対に完成しないと分かると、翌日は朝の6時からの作業。これがまた楽しかったです。

桶づくりはチーム作業

昔の桶職人もチーム作業だったそうです。作業も分業化されていたようで、箍を専門とする職人、板を専門にする職人のように分かれていたのかもしれません。「桶の技術が残るには全国に桶が作れる人たちがいて、必要な時には駆けつけてチームになって取り組む。こんな風になったらいいな!」とは桶職人の上芝さんの言葉です。

ヤマロク醤油の山本さんと小豆島の腕利き大工さんである坂口さんと三宅さん。三人からはじまった取り組みが、時間をかけながら全国に広がりをみせてくれたらいいなと切に願います。(職人醤油 高橋万太郎)