木桶職人復活プロジェクト
木桶職人復活プロジェクト
木桶職人復活プロジェクトとは
絶滅の危機に瀕している木桶。その木桶仕込みを続けるメーカーや関係者が、企業や業界の枠をを越えて集まり、毎年1月に小豆島で新桶づくりをしています。技術を共有して木桶と木桶職人を増やすことを目指しています。
はじまりは2012年、ヤマロク醤油から。
2012年、ヤマロク醤油の五代目 山本康夫の呼びかけからスタートしたプロジェクト。
木桶に関わる食品メーカーや流通業者、大工や料理人などが集まり、毎年一月に小豆島で新桶づくりをしています。技術を広く共有することで、木桶のメンテナンスや組み上げができる人材が全国に増える兆しがみえてきました。
奪い合いではなく、協力してシェアの拡大を
木桶仕込み醤油の流通量は1%程度ですが、その小さなパイを奪い合うのではなく、皆で協力してPRを行い1%を2%にすることを目指しています。実際に、ここでつくられた新桶が各地の蔵元に運ばれ、遠くは海を渡りイタリアのクラフトビールブルワリーBALADINに届けられるなど、広がりをみせています。
木桶の現状
①伝統的な調味料の喪失
江戸時代までは、和食のベースとなる醤油、味噌、酢、味醂、酒などの基礎調味料は「木桶」でつくられていましたが、費用対効果が合わないという理由で減少の一途をたどり、醤油業界の例では全体の1%以下まで落ち込んでいます。
②木桶の技術がなくなろうとしています
現在使われている木桶の多くは戦前に作られたものです。新桶がほとんどつくられない時期が続いたため、醸造用の木桶を製造する桶屋さんも残すところ1社のみ。このままでは日本の伝統文化が消えてしまうのです。
桶はリサイクルされていました
新桶はまず酒屋に運ばれて数年使われた後、桶職人の元で再び組み直し。醤油屋や味噌屋に運ばれ100~150年使われる循環がありました。これまの数十年の間は新規を導入する酒蔵は皆無で、醤油屋も桶を捨ててプラスチックやステンレスのタンクに移行してきましたので、このリサイクルの循環がなくなっていました。
木桶の魅力①|桶も生きている
木桶に使われることの多い杉の木材。その表面を拡大すると無数の小さな穴があり、発酵の主人公である微生物が住み着いています。そして、わずかに空気を通したり水分をため込んだりと、日々表情を変える姿は桶が呼吸をしていると表現されるほどです。
木桶の魅力②|その蔵元だけの生態系
そこに住み着く微生物は、その蔵元特有の生態系をつくります。研究機関に持ち込むと、新種の微生物であることもしばしば。百年を超える歴史の積み重ね。その蔵元にしか出せない味の理由がここにあります。
木桶の魅力③|時間がつくる味
桶仕込みの多くは春夏秋冬の温度変化に応じて発酵をする天然醸造。最低でも一年、長いものだと三年の時間を要します。時間がつくりあげる味わい。うま味成分のグルタミン酸の量が多くなるとの研究結果もあります。
プロジェクトが目指すこと
少ない市場を奪い合うのではなく、同じ志の醤油蔵、酒蔵、味噌蔵、流通関係者に飲食関係者が横に連携し、共に市場を大きくするために進んでいきたいと考えています。そして、「木桶仕込みはおいしい!」ということが広まり、木桶に関する商品が増えた結果として、木桶の需要が高まり、日本各地に桶職人が増えていくという循環を実現したいと考えています。
木桶で仕込むと、やっぱり、おいしい!
「和食」がユネスコの世界無形文化遺産に登録されました。味わいの土台となる基礎調味料も含めて注目をされることは嬉しいことですが、過去の遺産ではなく、現在進行形の「生きた存在」として仲間とともにつくれたらと考えています。木桶で仕込むと「やっぱり、おいしい!」のですから。(ヤマロク醤油 山本康夫)