木桶とは

①木取り

桶のつくりかた① 木取り

木の切り株を上から見ると、中心は赤くて外側は白い。

なんとなく想像いただけるでしょうか?外側の白が若くて、時間がたつと組織が変わって赤になるそうです。その白赤の境界線が「白線帯」とよばれ、組織の密度が高くなっています。

桶材としてはこの赤と白が一枚の板にあるものが良質とされています。赤身部分はヤニが少なく淡白。お酒の保存に適していて、白線帯は最もアルコールを通しにくいので、酒蔵に重宝されていたというわけです。

酒蔵が好む甲付板

このように白と赤が共存するものは甲付板とよばれ、一本の木から数枚しかとれない貴重な板材です。ただ、この切り出し方は独特。住宅用の建材などは白い部分は白太、赤身部分は赤身と、それぞれで切り出されることが一般的なようです。

また、桶は元々リサイクルされるものでした。酒蔵が新桶をつくって数十年たつと、桶屋に戻されます。そこで解体されて使える板を選別、組み直しをして味噌・醤油屋に運ばれます。その後は、数十~百五十年程度使われていたようです。

白と赤が共存する甲付板(こうづきばん)

異なる幅の側板を削っていく

甲付板は一本の木から4枚しかとれません。しかも、切り出す元の木の太さもそれぞれなので、切り出した板の幅も異なってしまいます。これらの板が桶を取り囲む側板(がわいた)になるのですが、一枚一枚の側板はそれぞれの個性をもっているのです。

角度をつけて円にする

側板と側板が接する面を正直(しょうじき)といいます。この面に角度をつけて削ることで、側板と側板をあわせた時に角度が生まれます。これを繰り返すことで円になる、というのが桶の構造です。

押して削る大きな台かんな(正直台)

その正直面を削るのが正直台(しょうじきだい)。長い巨大な鉋(かんな)です。斜めにたてかけて、その上を滑らせることで削ります。ここでの精度が出ていないと、きれいな円形にならない上に、漏れの原因になってしまうので気が抜けません。

削りすぎると漏れてしまう

押切(おしきり)とよばれるこの作業。「大工の感覚としては鉋は引いて削るもの。この押して削るというのは不思議な感覚だし、これをやると全身フラフラになるね」。削る作業が延々と続きます。百年漏れずに使える品質にするための大切な工程なのです。

これは底板の板材。側板に比べると厚くて重厚感があります。